ノルディックスキー・ジャンプ女子のエース、高梨沙羅(17=クラレ)が、18年平昌五輪(韓国)に向けて本格的に動きだした。今日8日、秋田・鹿角で行っている今季初となるジャンプ合宿を打ち上げる。昨季、最大目標だったソチ五輪で4位に敗れたが、W杯個人総合を2季連続で制した女王はこのままで終わるつもりはない。「平昌でリベンジ」という新たな誓いを立て、再び歩を進める。

 新たな目標へ、高梨が早くも動きだした。昨季終了後、約1カ月の休養を挟んだものの、4月下旬には秋田入り。ノーマルヒルより小さいミディアムヒルのジャンプ台で、約60本以上のジャンプを飛び、土台作りに取り組んでいる。すべては4年後、4位だった2月のソチ五輪での忘れ物を取りに行くためだ。「五輪ではたくさん応援してくれる中でベストを尽くせなかった。リベンジするしかない」と言葉に力を宿した。

 昨季、W杯でシーズン最多となる15勝(2位2回、3位1回)を挙げ、1度も表彰台を外すことなく2季連続で個人総合に輝いた。世界一を疑うものは誰もいないが、五輪のほんの一瞬だけ歯車が狂った。17歳で女王として迎えた重圧の中、不利な風が吹く厳しい条件が重なった。それでも「試合を転戦していく中でジャンプが狂っていることに気付けなかった。ジャンプに自信が持てなかったのが反省点」と言い訳せず、自分と向き合い続ける。

 昨季を踏まえ、陸上トレーニングでは、新たにスピード系の練習を取り入れている。ジャンプ台によって微妙に変わる形状に、体がすぐに反応できるようにするためだ。指導する父寛也さんは「去年の始動の時より内容がいい。練習の成果が出ている」。

 靴も3足新調した。11日からは、契約するスキーメーカー「エラン」の拠点であるスロベニアに出向く。今夏は女子のGP開催が危ぶまれているが、その場合も欧州を拠点にコンチネンタル杯などの海外試合を転戦する予定と、本番の冬へ準備を着々と進める。

 来年2月には世界選手権(スウェーデン)がある。高梨は「今季はそこが目標。見てくれる人たちに、楽しんで、笑ってもらえるようなパフォーマンスができるよう4年間を歩いていきたい」。17歳の女王は経験を力に、戦う覚悟を固める。【松末守司】