<テニス:ウィンブルドン選手権>◇最終日◇6日◇ロンドン・オールイングランド・クラブ◇男子シングルス決勝

 世界2位のノバク・ジョコビッチ(27=セルビア)が、11年以来3年ぶり2度目の優勝を飾った。大会男子で最多8度目の優勝を狙った同4位のロジャー・フェデラー(スイス)を6-7、6-4、7-6、5-7、6-4の3時間56分で破り、7日発表の最新世界ランクでも9カ月ぶりの1位に返り咲いた。

 聖地が何度も揺れた。攻めるフェデラー、守るジョコビッチ。約4時間の攻防は、最後に鉄壁の守りが勝った。「5歳の時に夢見たこの場所で、また勝てるなんて本当に最高の気分だ」。喜びすぎて、勝利の瞬間にはうずくまり、聖地の芝をつまみ食いした。

 第4セットの第10ゲームで、1度マッチポイントを握った。だがフェデラーのサーブの前に勝機を逸し、最終セットにもつれ込む。流れはフェデラーにあった。それでも「精神的に屈しなかった。絶対に勝ちたかったんだ」と、闘志をむき出しに勝利をつかんだ。

 どうしても勝ちたい理由があった。8年の交際を実らせ、恋人のエレナさんと昨年婚約した。予定日は明らかにしていないが、今年の4月に子供を授かったことも発表。「この優勝を、新しい妻と子供にささげたい」と喜びをかみしめた。

 今季、ウィンブルドン3度の優勝を誇るベッカーがコーチに就任した。フェデラーのコーチは、ベッカーのライバルだったエドベリだ。両コーチはウィンブルドンの決勝で対戦すること3回。2勝1敗でエドベリが勝ち越していた。「コーチにもささげたい」。ベッカーとも固く抱き合った。

 昨年6月、4歳で最初にテニスを習ったコーチが亡くなった。そのゲンチッチさんは、ジョコビッチの基礎をつくった人だ。「彼女にもこのトロフィーをささげたい」。ジョコビッチは、天に向け、高々と2度目のトロフィーを掲げた。【吉松忠弘】