<男子テニス・マレーシアオープン>◇28日◇クアラルンプール

 世界8位の錦織圭(24=日清食品)が、全米準優勝後初の大会でいきなり優勝だ。同28位のベネトー(32)を7-6、6-4で破り、ツアー今季3勝目、通算6勝目を挙げた。この優勝で今日29日発表の最新世界ランクで7位となり、自身が持つアジア最高位を更新する予定だ。錦織は29日に凱旋(がいせん)帰国。楽天オープン(東京・有明)に出場する。

 重責と重圧をはね返した。全米準優勝後の初大会。周囲の期待と第1シードの責務は、錦織も経験したことがない。その中で優勝し「悔しい敗戦の後にしっかり優勝できた。いろんな意味で大きい」。「ケイ」コールの中で誇らしげにトロフィーを掲げた。

 スタートから動きが硬い。積極的にネットに出るベネトーに追い込まれた。第1セットの第3ゲームで早々とサービスゲームを落とした。「負けるかもと思った」ほど、相手の集中力は高く、錦織を上回った。

 4-5で相手のサーブ。キープされたら、第1セットを落とす土壇場だ。ベネトーは、これが10度目の決勝進出だが、1度もツアー優勝がない。初優勝への緊張に敗れたのはベネトーだった。凡ミスが続き、錦織は「助かった」。5オールに追いつくと、タイブレークで先取。第2セットも押し切った。

 全米準優勝後、13日に帰国。香港に滞在後、マレーシアには20日に入った。1週間で米国、日本、香港、マレーシアと飛び、アジアの顔としてイベントに引っ張りだこ。今大会前も150人のファンにサインをするなど「さすがに疲れた」と、こぼすこともあった。しかし、その中で「簡単に勝っていくのがトップ選手」と、自らに言い聞かせた。

 この優勝でアジア最高位を更新する。今大会はツアーで最も規模が小さい。4大大会優勝で2000点だが、今大会は250点。しかし、この時期に「250点がかかると思うと、昨夜から寝られなかった」というほど、重みは大きい。

 栄冠とともに、東京に凱旋帰国だ。優勝の余韻に浸る間もなく、この日の夜の便で日本へ向かった。「(期待に)のみ込まれる不安はあるが、今は自信がある。日本でも優勝を目指したい」。年末に向け、錦織のラストスパートにエンジンがかかった。【吉松忠弘】