<高校ラグビー:光泉22-12浦和>◇1回戦◇28日◇花園

 全国屈指の進学校、県浦和(埼玉)の挑戦が幕を閉じた。光泉(滋賀)相手に前半5-5と互角の展開だったが、後半に2トライなどを許し、敗れた。それでも54年ぶり2度目の出場に約400人の応援団が押し寄せ、最後まで諦めない戦いぶりに花園が燃えた。

 54年ぶりのノーサイドは、高校ラグビーの「聖地」第1グラウンドで聞いた。響く大声援。芝の上で、胸にしみる笛が鳴った。涙があふれる。小林剛監督は選手たちをいたわった。「完敗。ただ、彼らの人生には、とてつもなく大きな宝物です」。ロッカールームから、おえつが響いた。

 チャンスをつくるも、パスミスでトライにつながらない。逆に、光泉に守りのスキを突かれ、トライを奪われた。後半残り6分。WTB白石充(3年)のトライで追い上げるが、反撃もここまでだった。埼玉県大会決勝で08年度以降、5度も敗れていた深谷を破ったBK自慢の展開ラグビーは、はかなくも散った。

 公立校として昨春の東大合格者数46人(浪人を含む)は全国一。文武両道で注目を集めた。しかし、選手は1人のラガーマンとして戦った。ラグビー未経験で、3年間、練習で走り続けたフッカー柴田尚樹主将(3年)は「54年ぶりとか文武両道とか関係ない。勝つか負けるか。そこで僕らは負けた」。

 しかし、すぐに前を向いた。「泣くのはロッカールームの中だけ。外に出たら涙をふけ」(柴田主将)。3年は、持参したが手を付けていない参考書のページを開く日も近い。東大理科一類を目指す白石は「悔いはない」。彼らの挑戦はいったん終わったが、県浦和の新たな歴史は、この日からスタートを切った。【吉松忠弘】

 ◆埼玉県立浦和高校

 1896年(明29)創立。生徒数1137人の男子校。OBには宇宙飛行士の若田光一氏、歌手タケカワユキヒデら。ラグビー部は46年(昭21)創部で、部員72人。OBの現役選手には筑波大NO8の粕谷俊輔、慶大SH正田真斗ら。