大相撲時津風部屋の序ノ口力士、時太山(当時17、本名・斉藤俊さん)が07年6月に暴行死した事件で、傷害致死罪に問われた元親方の山本順一被告(58)の第5回公判が26日、名古屋地裁で開かれた。証人として、同罪で有罪確定した兄弟子2人が出廷。2日連続で証言した兄弟子(25)は尋問終了後、発言機会を求めて芦沢政治裁判長へ声をかけた。「すいません。ひと言だけいいですか?

 親方になんですけど」。

 了承されると、3メートル左にいる山本被告の方を向いた。「本当に斉藤くんや遺族の人に申し訳ないという気持ちがあれば、自分のやったこと、弟子にやらせたことは正直に言ってほしいと思います」。今裁判で初めて同被告を正面に見据えた弟子が、思いを吐き出した。同被告は目を閉じて聞き入り、動かなかった。

 続いて出廷した別の兄弟子(23)は当時、山本被告の付け人だった。事件前日25日夜の暴行後、同被告に「お前らあんまりやってないな。顔が腫れてないじゃないか」と怒鳴られたことや、強要された悪質かつ巧妙な口裏合わせを次々と証言。同被告への思いを聞かれると「正直に全部、本当のことを言ってほしいと思っています」と訴えた。

 かつての「弟子」に諭された「親方」は28日、59歳の誕生日を迎える。拘置所で過ごしたこの1年、何を思ったのだろうか。10回の集中審理で予定される公判は折り返し、次回は来月11日に行われる。