静岡の期待にこたえます!

 大相撲春場所(14日初日、大阪府立体育会館)の新番付が1日に発表され、西十両筆頭だった初場所で9勝を挙げた三島市出身の磋牙司(28=入間川)が東前頭15枚目に番付を上げた。県勢の新入幕は05年夏場所の片山以来、約5年ぶりで、戦後4人目。身長166センチの幕内最小兵は、高らかに「2ケタ勝利」を目標に掲げた。07年夏場所の潮丸(現東関親方)から遠ざかっていた幕内の土俵に、郷土力士が帰ってきた。

 新入幕会見では異例の、金びょうぶが用意されていた。磋牙司は輝く壇上から「自分が番付を上げて、静岡を盛り上げていきたいです」と力強く宣言した。元前頭片山以来、約5年ぶりとなる県勢の新入幕。インクのにおいが漂う新しい番付表は、1番上の段に名前が載っていた。「名前が大きくなった。本当に上がったんだ…と思いました」と感慨深そうに話した。

 公称は身長167センチ。2月の健康診断は166センチだった。173センチに満たない人を対象とした第2検査では、関脇豊ノ島に次ぐ2人目の幕内力士。「低さをプラスに変えるしかない。ハンディがいっぱいなので。立ち合いで下から鋭く当たっていきたい」という。

 錦田中時代は、毎日牛乳を2リットル飲んだ。鉄棒にぶら下がって、肩を外したこともあった。「背を伸ばす」のに頑張った思春期も、今では笑える。力士の身体計測が始まった53年9月以降、幕内力士の最短身は藤田山らの167センチ。2メートル近い巨体がひしめく幕内の土俵では、歴史的小兵が逆に武器になる。

 故郷の声援も大きな励みだ。2月27日、沼津市内で開かれた「激励会」には、出身地三島市の小池政臣市長(69)や母校飛龍高のOBら約500人が集まった。「本当に多くのみなさんに集まっていただいた。勝って恩返しがしたいです」。幕内昇進を機に故郷で後援会の発足も決まった。

 98年総体で優勝し、高校横綱に輝いた。決勝で破ったのが現在の十両普天王で、その普天王に準決勝で敗れたのが元横綱朝青龍関だった。プロでの対戦前に、相手が“強制引退”し「胸を借りるというか、対戦したかったですね」。1月31日の潮丸引退相撲の時には「良かったな。頑張れよ」と声を掛けられただけに、少しだけ悔しがった。

 師匠の入間川親方(元関脇栃司)は「次は3賞、3役を目標にしてほしい」と期待する。「2ケタ勝てるように頑張ります。小さくても、相撲が取れるというのを見せたい」。ここがゴールじゃない。磋牙司の目に、まだ達成感はなかった。【近間康隆】