<大相撲春場所>◇5日目◇18日◇大阪府立体育会館

 東前頭15枚目の磋牙司(28=入間川)が、同12枚目隠岐の海(24)との「凸凹新入幕対決」を制して4勝目を挙げた。幕内史上最小兵167センチの体で、190センチの隠岐の海に真っ向勝負。懐に飛び込んで相手にまわしを与えず、最後まで下から攻めきって押し出した。静岡・飛龍高では、引退した元横綱朝青龍関が3位だった98年総体で優勝。小さいながら果敢に攻める姿で、朝青龍なき土俵を盛り上げる。

 小さくても、執念は負けなかった。磋牙司は、決して多くないまげを乱し、ひたすら前に出た。身長差23センチの新入幕対決。立ち合いで隠岐の海の懐に飛び込むと、低い位置からの右おっつけ、左はずで強烈に押した。「紙一重だった。おっつけられちゃうと流れが悪くなるから」。攻めの姿勢を貫き、4勝目を挙げた。

 今場所の公称は167センチ。1月の初場所前に計測された数字だが、2月の健康診断では166センチだった。力士の身体計測が始まった53年9月以降、幕内力士の最短身は元前頭藤田山らの167センチ。「今さらどうにもならない。逆に人にはない、下から攻める嫌な相撲を」。中学では毎日牛乳2リットルを飲み、肩が外れるほど鉄棒にぶら下がったが、成長は中2で止まった。だが2メートル近い巨体がひしめく幕内の土俵では、歴史的小兵が逆に武器になる。

 静岡・飛龍高(当時沼津学園)では98年総体に出場、決勝で現在十両の普天王を下して高校横綱に輝いた。その時、準決勝で普天王に敗れたのが、2月に引退した元横綱朝青龍関。1月31日の潮丸引退相撲では元朝青龍に「良かったな。頑張れよ」と声を掛けられた。「胸を借りるというか、対戦したかったですね」。幕内ではすれ違いになり、少しだけ悔しさが残る。

 宿舎は大阪・岸和田の天然温泉「スパ・リゾート

 リバティ」。源泉掛け流しの温泉で体を癒やす。「気持ちはしっかりしてます。感覚がダメだと、結果もついてきませんから」。場所前には「地デジ対応」のテレビをポンと購入。録画した取組を研究し、サプリメントやプロテインも勉強する。向上心旺盛の磋牙司が、日増しに存在感を大きくしている。【近間康隆】