賭博問題で揺れる日本相撲協会が、異例の「チケット払い戻し」を検討することになった。1日、名古屋場所担当部長の二所ノ関理事(元関脇金剛)が「お客さまの意向に少しでも沿う形が取れれば。私の一存では何ともできないので、理事会で判断を仰ぎたい」と語った。4日の緊急理事会の議題に挙げるという。

 名古屋場所の前売り券販売開始は夏場所12日目の5月20日。「週刊新潮」で大関琴光喜の野球賭博疑惑が報じられた、その日だった。以降40日が過ぎ、賭博問題は角界を揺るがすにまで発展。名古屋場所は最大13関取が「謹慎」となり、幕内4番、十両2番の取組が減ることになった。先発事務所には1日5件ほど「払い戻し」の問い合わせがある。

 チケットの裏面には「払い戻しはできません」と明記してある。日本相撲協会広報部も「電車が止まっても、何が起きても払い戻しはなかった」と説明する。時津風理事長(元横綱双葉山)が茶屋制度を廃止した57年以降、払い戻しを認めたのは特例の1度。89年1月に昭和天皇が崩御され、初場所初日を1日延期した際、初日の前売り券購入者に「千秋楽に振り替える」か「払い戻し」を選ばせただけだ。

 共催する中日新聞の関係者は、同理事の払い戻し可能案を聞くと「エッ」と驚き「えらいことになりますよ」とつぶやいた。売り上げ状況は昨年より約1割悪いとはいえ、すでに6億円強あるという。二所ノ関理事が「大変なことになると思うが、ファンの声も聞かなければいけない状況だから」と覚悟を決める提案。果たして相撲協会は、柔軟に対応できるのだろうか。【近間康隆】