史上初の汚名となった。17日ぶりに公の場に出てきた琴光喜は、伏し目がちだった。理事会での弁明は10分弱。脅された理由に「分かりません」と答え、出席者を苦笑させた。一部理事からは「番付降下での再出発案」も出たが却下。「解雇以上」の方針は覆らず、目に涙を浮かべながら無言で車に乗り込む。現役大関では初の解雇だった。

 特別調査委員会の村山泰弁護士は「弁明しても事実関係に変わりはなかった」と明かした。5月下旬、野球賭博疑惑が浮上した時に関与を否定。その後、一転して関与を認め、大嶽親方のために虚偽報告したことも判明した。ある理事は「ウソをついた罪は重い。大関の立場を分かってほしかった」。賭け金の大小でなく、理事会で「ウソ」をついた事実が重かった。

 大関の力士養老金1000万円に勤続加算金が加わる推定2600万円の「退職金」は支払われる。ただ、わずかな温情の「退職金」も減額の可能性があり、3000万円超の「功労金」は取り消された。角界からの永久追放で、親方にはなれない。国技館での引退相撲も消えてしまった。

 琴光喜は関係者を通じ「今さらながら大変なことをしてしまったと反省しています。処分されたのは仕方のないことだと思います」などとコメントした。この日の処分決定を受け、会員約800人の「琴光喜岡崎後援会」は解散決定。高校時代を過ごし、約400人がいる「鳥取後援会」も解散する方向だ。後援者は「佐渡ケ嶽部屋の方とも話していますが、落ち着いたら身内だけでも『断髪式』をやってあげたい」と声を震わせた。愛知が生んだ大関は多くの人間を裏切りながら、故郷の地で角界から去っていった。