賭博問題で揺れる相撲界が、名古屋場所初日前日の10日に、親方や関取ら計219人で土俵に謝罪する。日本相撲協会の村山弘義理事長代行(73=元東京高検検事長)が5日、土俵祭後、謹慎となっていない親方、十両以上の力士、行司、呼び出し、2等以上の床山を会場の愛知県体育館に全員呼び「土俵の神様」に頭を下げることを決めたと明かした。4日の会見では、賭博に関与した親方や力士ら延べ79人がずらりと並んで謝ったが、今度は謹慎ではない者たちで、出直しを誓う。

 普段は現役力士もいない静かな会場で粛々と行われる祭事が、ガラリと姿を変えることになった。10日の土俵祭後に、賭博問題で懲戒処分や謹慎を受けなかった親方94人、十両以上の力士59人、同行司21人、同呼び出し20人、2等以上の床山25人を集めることが決まった。名古屋場所担当部長の二所ノ関親方(元関脇金剛)は「謹慎していない人間だが、連帯責任があるということ」と、村山理事長代行の決断で、土俵の安泰を祈念する祭事の直後に謝罪することを明かした。

 村山理事長代行は4日の臨時理事会で、謹慎する武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)に代わって名古屋場所千秋楽の25日いっぱいまで、相撲協会のトップを任された。土俵祭で謝罪という異例の措置は、外部理事だからこその判断だった。初仕事として東京・千代田区の警察庁を訪問後は「親方をはじめ力士は全員謹慎しているつもりで全力を土俵に注いで、立派な相撲を披露することを肝に銘じてほしい」と、力説した。

 警察庁では相撲協会の伊藤理事らとともに中井国家公安委員長、安藤警察庁長官と約30分間面会した。一連の賭博問題を謝罪するとともに「9月には次の場所が控えているので、野球賭博の捜査結果を参考にして対策を講じなければいけない。急いで捜査の結論を出していただければありがたい」と要請した。

 捜査結果によって、野球賭博関与者にさらなる厳罰も辞さない構え。4日には賭博関与者延べ79人が謝罪。今度は多くが関与しなかった219人もの関係者が謝罪することで、相撲界全体に危機感を植え付ける狙いだ。

 「土俵の神」に頭を下げることは、他のスポーツとは違う国技を背負う責任感を自覚させる効果もある。「この際、伏在していることも含めて調査したい」。相撲界のウミを出し切るため、土俵祭だけにとどまらずに、前例のない取り組みを進めていくつもりだ。