NHKショックが残る相撲界が、警察から厳しい追及を受けた。野球賭博に関与した力士らが所属する相撲部屋が7日、賭博開帳図利などの疑いで警視庁から家宅捜索を受けた。捜索先は阿武松部屋(千葉県習志野市)や、時津風部屋(東京都墨田区)などに加え、名古屋場所を控えた愛知県内の各部屋の宿舎も含む数十カ所に上った。日本相撲協会による処分は決まったが、真相究明に向けた動きが本格化してきた。

 朝から午後にかけて、東京・墨田区を中心とする相撲部屋と、名古屋場所を控えた愛知県内の宿舎が、一斉に家宅捜索を受けた。その数、数十カ所。元大嶽親方(元関脇貴闘力)や元大関琴光喜関ら関与した力士らの立件に向け、大きな節目を迎えた。警視庁は押収した資料を分析し、暴力団の関与など全容解明を進める。力士らについても常習性や賭け金の額などを考慮し、賭博容疑での書類送検などを検討する。

 胴元として暴力団の関与を示唆した元力士が所属し、部屋の床山らが仲介役だった阿武松部屋は、拠点とする千葉・習志野市だけでなく、愛知・尾張旭市の宿舎にも捜査員が入った。阿武松親方(元関脇益荒雄)は「今、捜索を受けた関係上、詳しいことはお許しください。お騒がせして申し訳ありません」と、ひたすら頭を下げた。

 現役時代の野球賭博で親方自身が降格処分を受けた時津風部屋。東京の部屋に続き、犬山市の宿舎にも捜索に入るとの連絡を受け、時津風親方(元前頭時津海)は「捜査中なので、何もコメントできない。申し訳ない」と話した。琴光喜関が所属していた佐渡ケ嶽部屋の一宮市の宿舎では、報道陣に囲まれた佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)が「(捜索の)連絡は入っていない。あれば協力する」とした。

 村山理事長代行はこの日「捜査には全面的に協力するよう、協会員全員に指示した。捜査の結果を待って、さらに必要な反社会勢力対策等の措置を講じます」とコメントを出した。相撲協会の特別調査委員会による調査は、力士の名古屋場所への出場の可否判断に主眼を置き、野球賭博と暴力団の関係は把握できていない。そのため、協会は今後の警察の捜査次第で追加の処分を科す可能性を示している。

 この日、陸奥部屋へ出げいこした横綱白鵬は、土俵外の騒動が収まらない現状に「そうですね…。う~ん」と言葉を詰まらせながら、帰りの車に乗り込んだ。名古屋場所初日まで、あと3日。臨時理事会での一斉謝罪、NHKの生中継中止発表、そして家宅捜索-。身から出たさびとはいえ、土俵に集中できる日は、まだ来ない。