<大相撲名古屋場所>◇5日目◇15日◇愛知県体育館

 日本相撲協会の村山弘義理事長代行(73)が名古屋場所5日目の15日、幕内取組中に会場の愛知県体育館を不在にした。徒歩で近くの役所に向かったとみられるが、明確な説明はしないまま。不在中、観戦に来た男性(55)が倒れ、搬送された名古屋市内の病院で亡くなった。

 思わぬ形で、村山理事長代行の不在が発覚した。幕内5番目の武州山-土佐豊の仕切りの最中だった午後4時40分ごろ、升席で観戦していた男性が倒れた。心肺停止状態の男性は担架で運ばれ、理事室にほど近い廊下で心臓マッサージなどを受けた。次々と理事や親方が集まる中、最後まで村山理事長代行は現れなかった。男性はその後、救急車で病院に向かったが、死亡した。理事からは「予測不能だから仕方ない」との声も出たが、理事長が幕内の取組中に不在というのは異例の事態だ。

 村山理事長代行は「お客さまが倒れた瞬間は、外出していたかもしれない」ととぼけた。約1時間の外出だったが、関係者によると相撲協会の公務で利用する車を使っておらず、徒歩での外出で、慌てて協会の車が迎えに行ったという。この日は終日、名古屋滞在。大相撲で最も大事な、幕内の取組と同じ時間帯でなければならないほどの外出理由だったか問われると「せんさくしないでください」とけむに巻いた。

 その間、陣頭指揮を執った名古屋場所担当部長の二所ノ関親方(元関脇金剛)は「最善を尽くした。代行がいないことで支障は来さなかった。ただ、いてもらった方が安心する」と要望した。村山理事長代行は「外出している間は、理事の皆さんに留守をお願いした」と振り返った。

 今場所2日目は公務で東京に戻った。その際には、他の理事らに帰京理由が正確に伝わっていなかった。この日は、緊急事態で不在が発覚した。相撲協会の「再生」を掲げ、外部理事から理事長代行に就任した村山氏の対応は、どうにも間が悪かった。