<大相撲夏場所>◇14日目◇19日◇東京・両国国技館

 大関稀勢の里(25=鳴戸)が、日馬富士(28)を会心の内容で寄り切って3敗を死守した。これまで13勝23敗と合口の悪かった相手を撃破し、大関では自己最多タイとなる11勝目。同じく3敗キープの平幕栃煌山、旭天鵬とトップを並走し、初優勝のかかる千秋楽は把瑠都と対戦する。

 先に3敗の2人が勝った。それでも「やることは一緒。集中するだけ」と重圧をはねのけての完勝。6年ぶり日本人優勝を期待する満員の館内は大喝采だ。連敗でトップに並ばれ、開き直って復活。「かえって気が楽になった。思い切りがなくなっていた。守りに入ると自分らしさが出ない。思い切ってという気持ちがいい結果に出てよかった」。

 13日目の取組後には「もっと熱くならないと」と敗因を自己分析。脱出したこの日も同様だったという。「きょうもちょっと落ち着いていた。まあ、結果がいい方にいけば」。以前は負ければ無言も珍しくなかったが、最近は少し変わってきた。20代半ば。充実期を迎え、精神的にもひと皮むけつつあるようだ。

 他の大関陣が低空飛行を続けるのを尻目に、千秋楽まで堂々の優勝争い。史上初の6大関場所で存在感は際立っている。「胃が痛い。薬が手放せない」と鳴戸親方(元前頭隆の鶴)が話すハラハラドキドキの賜杯争い。初夏の15日間の主役となった大関は「まだあと1日ある。自分を信じるだけ」と、最後まで真っ向勝負を貫く。【大池和幸】