攻め方を貫いたソフトバンクのバッテリーと攻め方を変えた広島バッテリー。日刊スポーツ評論家の三浦大輔氏(44)は、ミランダ、九里両先発の組み立ての違いが、序盤の主導権争いの明暗を分けたと分析した。広島打線が終盤に追い上げたが、この差が結果的に、届かなかった重い1点につながった。

   ◇   ◇

ミランダは、降板した6回途中まで「奥行き」を使って攻め続けた。持ち球は直球、チェンジアップとフォーク。本塁打2発を浴びるなど3点を失ったものの、緩急を巧みに使うスタイルを変えることなく、走者を背負っても勝負球をしっかり投げきっていた。

特に、丸を3打席連続空振り三振に切ったことが大きい。日本シリーズはここまで精彩を欠く内容が続いているものの、打線のカギを握る存在であることは間違いない。そのキーマンに対し、第1、2打席は3球種を組み合わせて的を絞らせず。5回の第3打席は直球を使わずに仕留めた。打席の様子を見る限り、何がきてもタイミングが合っていないように見えた。結果球が直球、フォーク、チェンジアップだったことからも、完全に打撃を崩すことに成功していた。横の揺さぶりは少ないが、独特のタイミングの投球フォームも、広島打線を封じるのに効果を発揮していたのではないだろうか。

対して九里は、攻め方を変えた。3回までは右打者、左打者の内角にシュート、ツーシームでうまく懐を攻め「この球で詰まらせてやろう」という意図を感じ、リズムある投球を見せていた。しかし主軸が2巡目を迎えた4回。1死から柳田、デスパイネを連続四球で歩かせ、2点を失った。

2つの四球に共通していたのは外角中心の組み立てだったこと。ともに第1打席は内角を使って三振に切っていただけに、外を使うことは理解できる。ただ「甘くなってはいけない」という警戒心がカウントを不利にし、自ら内角を攻めづらい状況を招いてしまった。中村晃に許した先制の右前打は内角高めのスライダーを右前に運ばれた。四球後の投手心理はストライクを取りにいきたくなるものだが、引っ張れる球を待っていた打者に対し、ここでは逆に慎重さを欠いていた。

失点は九里が4(自責3)でミランダが3。差は1点だが、失点の仕方の違いがチームへのダメージの差にもなる。攻め方を変えることが悪いわけでは決してない。しかし、わずかな変化が届かなかった1点に表れ、勝負の分かれ目となった。(日刊スポーツ評論家)