広島打線を相手に3回を無失点に抑えた阪神ガンケル(撮影・前岡正明)
広島打線を相手に3回を無失点に抑えた阪神ガンケル(撮影・前岡正明)

初回2死走者なし。阪神の先発ジョー・ガンケル投手(28=マーリンズ3A)が投げ込んだ147キロ直球は、広島長野の外角いっぱいに決まった。3個目のアウトを取ると、顔色を少しも変えずひょうひょうとマウンドを降りた。

その後も内外角問わずストライクゾーンぎりぎりにテンポ良く決め、3回を無安打無失点と危なげなかった。

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ガンケルは軽く投げているようで、球はピュッと来る投球フォームで、過去に最多勝を獲得したグライシンガーに似ている。落ちる変化球を持っていた後者と違い、ガンケルは高低というより両サイドの制球で勝負するタイプだ。右打者の内角に食い込むツーシームが非常にいい。2回の鈴木誠はかなり窮屈に打ち、一塁への邪飛に倒れた。外角に逃げるスライダーもあり、打者としては左右に揺さぶられる感じがあるだろう。左打者に対しても、カットボール、スライダーで内角を攻められるので、苦にする様子はなさそうだ。

打者というのは、ホームベースに入ってくるボールは打ちやすい。その一方で、ベースから逃げるように両サイドを突かれると、打者の目線からすれば、外角球が遠くに見えると思う。この日、奪った2つの見逃し三振はいずれも外角ストレートというのも、うなずける。初球にストライクを取れるので、投手有利のカウントを作れるし、それがテンポの良さにつながる。

バタバタと三振を取るタイプではなく、打たせて取るのが持ち味だろう。カウントを取る球とウイニングショットが基本的に同じ。スライダー、あるいはツーシームを含めた内角の真っすぐ。これをどう組み合わせるか。打線の2~3巡目にかけて、捕手がコンビネーションよく組み立てていけるか、も重要な要素になってくる。非常にコントロールがいいので、大きな間違いはない。2~3点取られながらも、7回までは投げていける投手だと思う。

先発候補の顔ぶれを見た時、西勇、高橋、青柳に加え、ガンケルが入ってこないと、ローテーションの編成はかなり厳しくなるとみていた。今回のように安定した投球を見せれば、十分に開幕ローテに名を連ねるだろう。(日刊スポーツ評論家)

1回裏広島2死、長野から見逃し三振を奪う阪神ガンケル(撮影・前田充)
1回裏広島2死、長野から見逃し三振を奪う阪神ガンケル(撮影・前田充)