阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が紅白戦で実戦デビューを果たした。1番左翼で出場も、3打数無安打で快音はなかった。広島3連覇監督で日刊スポーツ評論家の緒方孝市氏(52)が現地で生チェックし、注目ルーキーの打席を解説した。

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佐藤輝はいい。キャンプ初日に打撃練習などを見て「これからプロの体力をつけることが必要だ」と言った。その部分をクリアしていけば、2、3年後には本当にソフトバンク柳田級の選手になると思う。

4日の紅白戦、安打という結果こそ出なかった。しかし、この時期、ルーキーにとって、そんなことはまったく関係がない。自分の監督としての経験から言っても、矢野監督以下、首脳陣がチェックしていたのは「佐藤輝が打席でどんな姿を見せてくれるか」という点だろう。

そこで言えば十分、好感触を得ていると思う。まず佐藤輝は打席での始動が早い。そこで始まって自分のタイミングを取れている。言うまでもなく打者と投手はタイミング、間合いの勝負だ。打者はしっかりそれを取ろうとするし、投手はクイック・モーションを使ったり、球を長く持ったりしてそれを崩そうとする。

その点、佐藤輝は自分の間合いでスイングできていた。ストレートのタイミングで待っていても変化球で大きく崩される感じがしない。追い込まれたカウントからもちゃんとコンタクトできていた。

こういう様子を見た上で言えば佐藤輝は「本塁打か三振か」という打者ではないということだ。豪快なフルスイングが目立つので、そういう風に思われがちかもしれない。だがボールの見極め方からすれば、そんな荒っぽい打者ではなく実戦向きと感じた。

なにしろ新人だ。どんな投手との対戦もほとんどというか、まったく初めてだろう。味方投手にしても、それは同じこと。それを考えれば初対戦であれだけ対応できたのは、やはり非凡なものを持っていると言うしかない。

肩もいいし、走力も悪くない。やはり複数球団が競合した「ドラフト1位」だなと実感した。こんな選手を阪神がどこまで育ててくれるか、楽しみである。