巨人がソフトバンク戦の連敗を14で止めた(日本シリーズ、オープン戦含む)。日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏(50)は、“腹をくくった”巨人の戦いぶりをポイントに挙げた。

   ◇   ◇   ◇  

巨人は腹をくくった、捨て身の戦いだった。6回から勝ち試合に投げる救援投手全員をつぎ込んだ。9回の中川のイニングまたぎの続投も、シーズン中ではない、短期決戦の戦い方。原監督はセ・リーグ相手にもたまにやるが、いつもの形を崩すことをやる。それができる監督だし、やらないといけない試合だった。

腹のくくり方にも種類がある。2つの場面が象徴的だった。7回2死三塁でバレンティンを迎え、ビエイラに継投。速球が武器で相手も直球1本を待つ場面。それでも160キロ前後の直球なら狙われても、速球に強くないバレンティンを打ち取れる可能性が高い。ベンチが腹を決めて送り込んでピンチを切り抜けた。

一打逆転サヨナラ負けとなる9回2死一、二塁で捕手炭谷は逆の腹のくくり方をした。抑えのデラロサで一番信頼できる球種は150キロ台の直球だろう。だが甲斐もそこを狙ってくる。フルカウントとなり、歩かせれば逆転の走者が得点圏に進むことになり、四球は避けたい。だが「打てるものなら打ってみろ」と覚悟を決めて直球を投げるより、制球力で直球より劣るスライダーで相手の狙いを外しにかかった。これも違う腹のくくり方で、見逃し三振で締めた。

苦境に立たされた時、セオリーを通すだけでは脱出できない。腹のくくり方の押し引きが、巨人の対ソフトバンク連敗脱出のポイントだった。だがこの勝利で苦手意識が消えたとまではいかないだろう。両チームが日本シリーズに進んだ時に、巨人が過去2年間の借りを返す思いでやっていくことが必要になる。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対巨人 7回裏ソフトバンク2死三塁、バレンティンを一飛に仕留め雄たけびを上げるビエイラ(撮影・足立雅史)
ソフトバンク対巨人 7回裏ソフトバンク2死三塁、バレンティンを一飛に仕留め雄たけびを上げるビエイラ(撮影・足立雅史)