阪神青柳、中日大野雄が東京五輪の侍ジャパンメンバーらしい好投をみせてくれた(青柳は7回4安打1失点、大野雄は8回5安打2失点)。

ともに先発としての仕事を果たしたが、五輪ではロングリリーフも含めて左右の中継ぎを担う可能性がある。金メダル獲得に大事なポジションを託される2人。それぞれに国際舞台で気を付けてほしい点がある。

下手気味のサイドスロー右腕の青柳は、その独特のフォームと軌道から、ボールを動かして封じていく。一般的に変則右腕は、右打者より球離れからの距離がとれる左打者の方が攻略しやすいといわれるが、青柳は特にコンパクトに振って当ててくる打者に注意してもらいたい。この日2安打を許した中日高松がこのタイプ。中継ぎで全力で投げた際に持ち味の制球を崩さないようにしてほしい。

大野雄は左打者への内角の使い方。日本では通じているストライクゾーンでの球威も、外国人打者にまともにいくと危ない。「甘くなったら」という恐怖心を捨て、いかにインコースのボールゾーンに投げ込めるか。パワーのある相手に踏み込ませないためにも、より重要になってくる。

短期決戦の国際大会を戦うにあたりバッテリー全体で頭に入れておいてほしいことがある。「念には念を入れる」という意識をたたき込み、「あわよくば」という考えを排除することだ。この試合の7回の佐藤輝の打席を例に説明したい。

初球外角カットボールをファウル、2球目の内角高め直球をファウル。3球目は外角を狙ったスライダーが抜けてカウント1-2。4球目は外角直球でファウル、5球目外低めのフォークで一ゴロに打ち取った。1発のある打者に対し、内角の厳しいコースを1球挟んでアウトコースで打ち取ろうとする組み立ては、シーズン中では問題ない配球。しかし五輪では1-2からの4球目でもう1度内角ボールゾーンへの直球を挟んでほしい。カウントは2-2となる可能性が高いが、この念押しが相手打者、ひいては相手チームに大きな意識付けになり、その後の配球の広がりにつながる。そして、この1球には「あわよくば見逃してストライクが取れるかも」「ひょっとしたら打ち取れるかも」という邪念を持たず、ボールゾーンに投げきること。だからこそ、球数をかけても意味のある球になる。

これはシーズンでは勝負どころでのアプローチといえるが、負けられない短期決戦は、常に勝負どころ。例に挙げた内角球の使い方に限らず、決して手間を省かず、色気を見せない。バッテリーには、この意識を忘れずに五輪の舞台に臨んでほしい。(日刊スポーツ評論家)

中日対阪神 1回表、登板する中日先発の大野雄(撮影・森本幸一)
中日対阪神 1回表、登板する中日先発の大野雄(撮影・森本幸一)