やや疲れが見え始めたように感じたヤクルトを相手に、巨人は初回に3点を先取した。この時点で連敗を止める大きなチャンスかと思ったが、勝負事は甘くない。連敗している原因は、まったく改善されていないまま、連敗だけが伸びてしまった。

投手陣の投球フォームが悪すぎる。先発した戸郷は6回無死二塁からサンタナに同点2ランを浴びて降板。5回0/3で4失点という結果だが、内容はそれ以上に悪い。初回に3点を先制してもらいながら、2死から連続四球。5回も先頭打者に四球を与えた。四球を与えたイニングで失点はしていないが、球数は106球。3本塁打を浴びながら4失点で済んだのは、ラッキーとしか言えない内容だった。

フォームを崩している投手には共通点がある。何度も指摘しているが、とにかく腕が振り遅れ、体が開いて投げる投手が多い。今試合で先発した戸郷は「開きが早い」という代表投手だろう。好調時と比べても体の開きが早いから、フォークボールで空振りが取れなくなっている。戸郷に象徴されているが、巨人の投手陣は投げ終わったときに体の向きが完全に一塁側を向いてしまっている投手が多い。

簡単に説明すると、トップの形ができたときには、左肩が開いて上半身が突っ込んでしまっている。だからボールを持つ手が外側を向いてしまい、右腕が遠回りして振り遅れてしまう。軸足に重心がたまっていないし、左腕の使い方も悪い。だから左肩を開かせて右腕をぶん回すようにしか振れなくなっている。シュート回転する球や抜け球が多くなり、制球力が悪くなっている。

9月に入り、大失速した要因のひとつに、先発投手陣の間隔を詰めて起用していることが挙げられている。火曜日に投げる投手が中4日で日曜日に先発し、その他の曜日に投げる投手は中5日で回るローテーション。しかし、個人的には球数さえ100球程度に限定してやれば大賛成。日本でも投手の分業制は確立しているし、メジャーの先発投手は中4日や中5日で回っている。今後は日本でも“当たり前”のローテーションになっていくと思う。

ではなぜ、巨人では登板間隔を短くして失敗していると思われるのだろうか? 登板間隔が短くなれば、疲労もたまりやすいし、フォームを矯正する時間が少なくなる。投手コーチはその短い時間の中で、フォームを矯正する指導やアドバイスを送る必要がある。それができないか、その投手に合った指導ができていないのかもしれない。いずれにせよ、登板間隔を詰めてローテーションを組めるような体制や、先発する投手に間隔を詰めて投げる体力や修正能力が備わっていないのだろう。

打線にしても、同じようなことがいえる。無死三塁や1死三塁のような三振をしてはいけない場面で強振するバッターが多い。スタメンにも、機動力を使える選手が少ない。相手バッテリーは長打や得点圏でのタイムリーを打たれないように気をつけるだけでいい。強振されれば投手は嫌なものだが、それだけを気をつけるだけでいいなら対処法に集中して投げればいい。

このままズルズルいってしまうと、CSどころか、4位の広島に逆転される可能性も出てくる。試合の流れが悪いというより、投打にわたって修正しなければいけない点が修正できていない。つい1カ月前まで優勝争いをしていたチームとは思えないような状況に陥ってしまっている。(日刊スポーツ評論家)