ヤクルトは最高の形での勝ちパターンに入っていた。絶対的エースの山本から先制し、同点とされたが球数を投げさせて6回降板に追い込んだ。8回に山本よりは力の落ちる救援陣を打ち込み、あとは清水、マクガフとつなげればという理想的な展開をつくった。

オリックス対ヤクルト 8回裏オリックス1死、三振となった杉本のスイングをアピールする清水(撮影・江口和貴)
オリックス対ヤクルト 8回裏オリックス1死、三振となった杉本のスイングをアピールする清水(撮影・江口和貴)

8回1死、杉本の打席で清水の投球に不穏な流れを感じた。2球目のインハイ直球はスイングが完全に崩れたファウル。早々に追い込んだが、7球目まで粘られた。結局、最後はフォークを空振り三振したが、杉本の3打席目までの内容ならもっと早く決着できた。

初回2死三塁で外角スライダーを捉え、ライナーが伸びすぎてしまって中飛。捕手の中村は「危なかった」と感じたはずだが、杉本は「打ち取られた」と意識させられた。1つの結果をどう捉えたかが4番との攻防の分岐点となった。2打席目以降はスライダーを追い掛けて、打てる気配がしなかった。

打者は振れば感覚が戻ってくることがある。8回は打ち取ったが、杉本の粘りに潮目がわずかに変わった。それでもT-岡田の安打までは許容範囲だったが、安達の四球が痛かった。安達は2打席目まで淡泊だったが、3打席目の6回2死走者なしから8球粘っての右前打は丁寧な姿勢が見えていた。この四球による出塁で2人目の走者が出てしまった。その後のピンチを断ち切ったが、9回は1番福田以降に回る打順でマクガフにつないでしまった。

※投手から見た図。○=直球、横△スライダー、▽=フォーク、◇=カットボール。
下線はファウル、★は空振り、白ヌキは最終球、数字は球速
※投手から見た図。○=直球、横△スライダー、▽=フォーク、◇=カットボール。 下線はファウル、★は空振り、白ヌキは最終球、数字は球速
5回裏オリックス2死一、二塁、吉田正を中飛に仕留めガッツポーズを見せる奥川(撮影・江口和貴)
5回裏オリックス2死一、二塁、吉田正を中飛に仕留めガッツポーズを見せる奥川(撮影・江口和貴)

ヤクルトは山本と当たる初戦は元々、分が悪かったが、劣勢をひっくり返して勝利目前だっただけにダメージの残る敗戦だ。それでも光明はある。奥川は落ち着いて自分の投球を表現していた。この試合に限って言えば、シリーズ初戦で力みもあるのは仕方のないことだが球数を要した山本よりも、奥川の方が内容は上回っていた。今季初めて登板間隔を詰めて、第7戦にも先発できる見通しが立った。山本降板までは理想通りの戦い方ができていただけに、第2戦で引きずらずに、切り替えられるかがカギとなる。(日刊スポーツ評論家)