調子が悪かったといえばそれまでだが、ロッテの佐々木朗には明確な弱点がある。本来、まだ高卒3年目の投手だから厳しい目で見たくないのだが、最年少で完全試合を達成した“怪物投手”。超一流投手としての視点で評論したい。

佐々木朗と対戦するチームが真っ先に考えるのは、「100球限定」というスタイル。粘りさえすれば、よほどでない限り9回までは投げられない。チームの目標とすれば5回までで100球ぐらいを投げさせれば勝機は大きくなる。明確な目標を定められる。

目標というのは明確になればなるほど「迷い」がなくなる。特に佐々木朗は右の本格派で投球スタイルもシンプル。攻略法もそれに比例してシンプルになる。

狙いは真っすぐ1本。追い込まれるまではとにかく真っすぐ狙い。ボールゾーンへの変化球にどこまで我慢できるか。ストライクゾーンへの変化球にはどこまでファウルで粘れるか。勝負の分かれ道になる。

今試合の佐々木朗は真っすぐがシュート回転し、高めに抜ける球が多かった。球威があるだけに、意図して真っすぐを高めに投げているときはいいが、真っすぐだけを待っている状況だと、プロの打者は簡単に空振りしてくれない。実際、真っすぐの空振りは1球もなかった。

フォークも真っすぐと同じように高かった。3回のウォーカーの中前安打、岡本和の2ランは落ちきらないフォーク。フォークという球種は高めに浮くと落ちが悪くなり、長打になりやすい。好調時の佐々木朗は、意図してフォークをストライクゾーンに投げられるが、今試合ではそこまで操れなかった。

好投手と対戦する打線は、それなりの「備え」をしてくる。球数制限以外でいえば、クイックを苦手にしているところだろう。

まともに打ち崩すのが難しいなら、機動力を使うのは常とう手段。「アウトになってもいいから揺さぶっていこう」となれば、それだけ思い切ったスタートが切れるようになる。今試合でもウォーカーが1盗塁し、吉川が2盗塁。得点に結び付いていた。

盗塁に関して言えば、捕手の松川がフォローできなくなっている。開幕当初は気にならなかったが、ここにきて投球を捕ってから投げるまでが遅くなっている。

おそらく後ろにそらしたり、しっかりキャッチングしなければいけないという圧力を感じているのかもしれない。送球の素早い捕手はミットに捕球前に送球の体勢に入れるが「しっかり捕ってから投げる」という意識が動きを遅らせているだろう。佐々木朗の剛速球を高卒ルーキーが受けているだけでもすごいのだが、プロの世界では見逃してくれない。

もっとも佐々木朗の調子そのものが良ければ、簡単には攻略できない。ただ、佐々木朗の潜在能力をもってすれば、調子が悪いときでも勝てる投球はできる。真の“怪物投手”を目指し、球界NO・1投手ではなく、歴代NO・1を目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)

巨人対ロッテ 厳しい表情でベンチに戻るロッテの佐々木朗(左)と松川(撮影・足立雅史)
巨人対ロッテ 厳しい表情でベンチに戻るロッテの佐々木朗(左)と松川(撮影・足立雅史)