阪神の悲願だった優勝が完全消滅する日が近づいた。そして広島に並ばれる危機にも陥った。

大石 阪神はここというチャンスで打てなかった。逆に広島サイドは勝負どころの采配がさえた。それは九里の早い交代、代走起用などの得点の取り方、8回途中から投入した抑えの栗林のイニングまたぎに表れた。特に阪神が広島に奪われた2点目が勝敗を左右するポイントになった。

阪神先発の青柳は4回1死一、三塁、小園の二ゴロで1点を失って均衡を破られる。木浪が二塁送球でアウトにしたが、ショート中野がこれを一塁に悪送球し、打者走者の小園に二進を許した。2死二塁になった直後、7番磯村に中越え二塁打で2点目が入った。

大石 小園を二塁に進めてしまったことで、前に守ったセンター近本の頭上を磯村の打球が越えてしまうことになった。フェンス直撃の大きな当たりだったが、打者走者を一塁にとどめていれば、深めに守って2点目は入っていないかもしれない。阪神はあの2点目で広島に主導権を握られてしまう。中野のミスに限らず、今シーズンも阪神の失策数が多いのは、各選手が内外野の複数ポジションを守っているところに原因がある。それを繰り返していると、選手が1つのポジションを守り切る責任感が薄れてしまうものだ。結果的に守備を軽く考えていると言わざるを得ないだろう。

青柳が約1カ月前に12勝をマークした際に1・38だった防御率は、これで2・02まで落ち込んだ。

大石 立ち上がりの青柳は両サイドに投げ分けていたが、広島に効果的に点をとられた。そこにミスが絡んでしまった。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

阪神対広島 広島に敗れファンにあいさつする阪神ナイン(撮影・前岡正明)
阪神対広島 広島に敗れファンにあいさつする阪神ナイン(撮影・前岡正明)