セ・リーグ3位争いの生き残りを懸けて、4位広島と5位阪神が対戦。ともに負けられない戦いだが、開幕投手を務めた広島大瀬良が初回に4失点。阪神の逃げ切り勝ちを許してしまった。
ただでさえ、先発投手の立ち上がりは難しいが、大事な試合にもなるとさらに難しくなる。軸になる球の見極めができずに、苦しくしてしまうケースがある。
広島バッテリーが選んだ軸球は、カットボールだった。初回の球数は29球で、そのうちの13球がカットボール。特に先制点を許した1番から3番までには、11球中8球がカットボール。2ランを放った5番原口がカーブを打つまでは、すべてカットボールが結果球。4人の打者に対して3安打されてしまった。
確かに、真っすぐを投げる感覚でカットボールを軸球にして投げるピッチャーはいる。しかし、そうしたスタイルで投げる投手は、いい真っすぐが投げられないわけではない。真っすぐもいいが、カットボールはもっといいというタイプ。カットボールという球種は「真っすぐ系の変化球」であり、いい真っすぐが投げられることが前提に成り立っている。
大瀬良は自分の真っすぐを見直す時期に入っている。体が開きやすい投げ方で、真っすぐに自信がないのだろう。それでも球速150キロが出ていたときは、打者は勝手に真っすぐを意識してくれる。もう1度、スピードを取り戻すことができないなら、体が開かない投げ方や、スピンをかけてボールのキレを上げられるように努力しないといけない。
2回は一転してカットボールは2球だけになった。おそらくカットボールを狙われていると思ったからだろうが、忘れてはいけないのが、このイニングの14球中、真っすぐが6球だったこと。変化球を投げすぎてスピードもキレもいまひとつだった真っすぐだが、それでも無失点に抑えられていた。
年齢もまだ31歳。老け込む年ではない。真っすぐにこだわって勝負しろとは言わないが、もう1度磨き直せば変化球は生きてくる。大事な試合では、経験豊富な投手が頼りになる。チームの危機を救えるように、復活してもらいたい。(日刊スポーツ評論家)