巨人が今季最終戦で完封勝利を挙げた。それも、長く巨人を率いてきた原監督の最後の試合だった。まずは球界を長きにわたって支えてきた原監督に、心からお疲れさまでしたとの言葉を送りたい。

同時に、いかに実績を積み上げようとも、1年ごとの結果によって進退を決断するこの契約社会の厳しさも痛感する。バトンは阿部ヘッドに託される。

言い方は厳しくなるが、既に阿部ヘッドの戦いは始まっている。巨人には、3年後に優勝を狙えるチームづくり、などという枕ことばは通用しない。来年からすぐに覇権奪回を掲げ、負けられない戦いに入る。

原監督が育んできた戦力が鮮明に実力を発揮した。先発山崎伊は故障を承知でドラフト2位で指名。今季10勝目をプロ初完封で飾った。戸郷がエースに、山崎伊も主力として先発スタッフがそろい、新旧交代が進んでいる。

野手に目を向ければ、外野は外国人選手によってまだ流動的だが、内野陣はひとつの形が見えてきた。門脇もショートの定位置を手中に収めつつある。

吉川の適時打で奪った1点を山崎伊が守り抜いた。この試合に限れば、力あるチームの勝ち方だった。つまり、阿部ヘッドが託されたチームは、すぐに優勝できるチームに変化できるということだ。

そのために、明確な補強ポイントがある。リリーフ陣の再構築、これに尽きる。現在、巨人のリリーフ陣の防御率3・81は12球団ワースト。この現状を踏まえ、阿部ヘッドが新方程式を作り上げ、自信を持って継投に入れる戦力を整えることが必須。

捕手出身監督として、ここは阿部ヘッドが1番力を発揮できるところだ。この日の完封も素晴らしいが、裏を返せばリリーフ陣に一抹の不安があったからの続投に感じたのは、私だけではないはずだ。節目の完封に、巨人が今抱える課題が表裏一体として見える。

原監督が残したものは大きい。ここに阿部ヘッドが新しい力を加え、巨人は再スタートを切る。プレッシャーは計り知れないが、巨人は常勝が義務付けられている。苦しくとも今、この時から覇権奪回への戦いは始まっている。

敗れたDeNAは3位でCSに突入する。2位と3位の違いは歴然とあるが、自力で2位を決められなかった悔しさを広島相手にぶつけるしかない。(日刊スポーツ評論家)

巨人対DeNA 最終戦セレモニーで巨人阿部ヘッド兼バッテリーコーチ(中央左)を抱き寄せて耳打ちする原監督(撮影・宮地輝)
巨人対DeNA 最終戦セレモニーで巨人阿部ヘッド兼バッテリーコーチ(中央左)を抱き寄せて耳打ちする原監督(撮影・宮地輝)
巨人対DeNA 5回裏巨人の攻撃中、舌をだして笑顔の原監督(右)。左は阿部ヘッド兼バッテリーコーチ(撮影・浅見桂子)
巨人対DeNA 5回裏巨人の攻撃中、舌をだして笑顔の原監督(右)。左は阿部ヘッド兼バッテリーコーチ(撮影・浅見桂子)