現役時代は阪神一筋22年、4番や代打の神様で活躍した日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(54)が甲子園で試合をチェック。9回に4番の大山悠輔内野手(28)がCS初安打となる二塁打で好機をつくり、サヨナラ勝ちにつなげた1本が自身にとってもチームにとっても大きいと分析しました。【聞き手=松井清員】

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阪神は大山にここぞの1本が出て勝ったことが大きいですね。CSで調子のいい選手、悪い選手がはっきりしてきた中でこの日も3打席無安打。タイミングが合わず、でも三振したくないから、どのボールも打ちにいって、当てにいくような打撃が続いていました。

9回は栗林に今季4打数3安打という相性の良さも味方したかもしれません。浮いたところをしっかりとらえ、しかも理想的な長打。“逆シリーズ男”になりかけていたところで、決勝点につながったのだから、本人が一番ほっとしたでしょう。チームは2試合続けて5安打ずつですが、良い投手が出てくる短期決戦で打ち勝つ試合は望めません。その中で、ムードメーカーでもある4番が乗るか乗らないかでは大違いです。

投手陣は大瀬良が今季最高のピッチングをして、対照的に伊藤将は今季最悪ともいえるピッチングでした。これが何が起こるか分からない短期決戦です。それでも粘った伊藤将は大したもので、同じ7回1失点に持ち込み、1点を争うシビれる展開を演出しました。

この緊張感を味わえたことも阪神にとっては大きい。経験上、日本シリーズはシーズンとは比較にならないほどシビれます。ベンチもスタンドの雰囲気も異様で重く、その中で結果を出さないといけない。9年前、前回14年のソフトバンクとのシリーズに出た今の現役は、控えだった梅野の1イニングだけで、みんなが初体験になる。この日はそれと似た短期決戦独特のムードの接戦を“前哨戦的”に体験でき、勝てたことも本番に生かせるはずです。

阪神は無敗で突破すれば理想でしょう。でも一気に決めると気負わず、岡田監督が言う通り「普通にやること」が大切です。負けたら終わりの広島はそれこそ高校野球戦法でくるでしょうが、どんと構えて戦うこと。そうした両軍の戦い方の違いも第3戦の見どころです。(日刊スポーツ評論家)

阪神対広島 9回裏阪神1死、大山は右越えに二塁打を放つ(撮影・藤尾明華)
阪神対広島 9回裏阪神1死、大山は右越えに二塁打を放つ(撮影・藤尾明華)
阪神対広島 9回裏阪神1死、大山は右二塁打を放つ(撮影・加藤哉)
阪神対広島 9回裏阪神1死、大山は右二塁打を放つ(撮影・加藤哉)