オリックスは山本由伸投手(25)が好投し、3勝3敗で日本一へ逆王手をかけた。阪神OBで日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(40)は勝敗の分岐点に、右翼先発した森友哉捕手(28)の4回ビッグプレーを選択。阪神2番手で登板した西勇輝投手(32)の内角攻めにも注目した。【聞き手=佐井陽介】

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勝敗の分岐点は右翼先発したオリックス森選手のスーパープレーにあったように感じます。1点リードの4回2死一、三塁。阪神1番近本選手の大飛球をフェンスにぶつかりながらジャンピングキャッチ。リクエストでも判定が覆らなかったことで、流れは一気にオリックス側に傾きました。それは不安定な立ち上がりだった山本投手が5回以降、見違えるように本来の投球を取り戻した事実からもうかがえます。

森選手の本職は捕手。レギュラーシーズンでも今季数試合しか経験していない右翼守備でドンピシャのタイミングで捕球するまでにどれだけの練習量があったことか…。近本選手の打球が打ち上がった瞬間、マウンド上の山本投手は逆転3ランさえ脳裏をよぎったことでしょう。投手目線で見れば、ただただ「ありがとう!」としか表現できないビッグプレーでした。

山本投手には想像を絶する重圧がかかっていたはずです。ただでさえ負ければ終戦となる一戦。今回の日本シリーズ初戦では自己ワースト7失点で降板しており、いまだ同シリーズ未勝利だという声も当然聞こえていたでしょう。しかも今オフのメジャー移籍もウワサされる中、今年最後となるであろうマウンド。すべてのプレッシャーをはねのけて日本シリーズ最多の14三振を奪った精神力は、さすがとしか言いようがありません。

一方の阪神は6回から2番手に西勇投手を送り込みました。2戦目に先発していた投手をあえて選んだのには明確な意図があったのではないでしょうか。西勇投手はシュートを得意球とするスタイル。この日は頓宮選手にソロを浴びましたが、何より注目したのはその投球内容です。セデーニョ選手や紅林選手ら右の強打者に対して内角球を投じ続ける姿を見て、第7戦に向けて右打者の調子を狂わせにかかったのではないかとも想像しました。

阪神からすれば、エース格の村上投手を立てて決めにいった試合での敗戦は痛い限りです。一方で、西勇投手が投げた終盤3イニングが第7戦にどう影響してくるのかも、興味深いポイントになりそうです。(日刊スポーツ評論家)