今年のDeNAはどんな野球をするか、とても興味深い。今永がメジャー移籍して、バウアーもどうなるか見通しはたっていない。

昨季に比べ先発陣の顔触れは大きく変わりそうだが、現状で不透明な部分に焦点を当てるよりも、若手の躍動が期待される野手陣を中心に、宜野湾の強い日差しを浴びながら、中日との練習試合を見た。

タイトルホルダーが並ぶ内野陣は強力だ。この日のフリーバッティングを見る限りではオースティンの調子も悪くなさそうだ。では、攻撃陣は盤石かと言えば、そうとも言い切れない。

昨年は攻撃陣が機能すれば勝つが、沈黙すれば負けるという、わかりやすい戦い方だった。今季もそうした大味な部分が目立っては、打てない時に苦しい。そのためには、バックアップメンバーが、この時期からどんどんアピールすることが、チームの総力を底上げするには大切だ。

練習試合の1番から3番まではルーキーで固めた。1番右翼が度会隆輝(21=ENEOS)、2番セカンドが石上泰輝(22=東洋大)、3番サード井上絢登(23=四国IL・徳島)というラインアップだった。

初回裏の攻撃ではヒットは出なかったが、いずれのバッターもしっかりタイミングは取れており、スイングも強かった。私の印象としては振れているなという感じがした。

そして2回裏、6年目の知野が代走で出てカウント1-2からの4球目の変化球で盗塁。変化球が低投となり捕手は二塁に投げられない。さらに1死二塁から次打者のセンター定位置よりも、やや前めの飛球でタッチアップ。際どいタイミングだったが、積極的な走塁で三塁を陥れた。

また、ショートの2年目林は3回裏にショートへの内野安打を足で稼ぐと、カウント0-1からの2球目変化球で盗塁を決めた。こうした足でチャンスをつくり、広げていくプレーが、今までのDeNAとはひと味違う攻撃の幅になる。

セカンドには牧、サードには宮崎がレギュラーを張っている。現状ではショートをどうするのか。球団はドラフト1位で森(5年目)を指名し、FAで大和を、トレードでは京田を獲得してきた。それは球団としていまだに、不動のショートが育っていないと感じ、もしくは2番手の若手の伸び代に満足できなかったからだろう。

タイトルホルダーが並ぶ内野陣であっても、いずれ訪れる若手への切り替えを考えた時、この日スタメン出場したルーキーたちのように、どんどん新しい力が必要になってくる。

与えられたチャンスをつかまなければ、次々と若手が出てくる。それはプロ野球では絶対に避けられない競争原理だ。

この日、スタンドでは明大野球部の指導者が熱心に試合を視察していた。このことが示すことも、グラウンドの選手にとってはシビアな現実だ。今オフのドラフトではスーパールーキー宗山(明大)をどの球団が指名するかが今から話題になっている。

息つく暇もなく、新しい素材は出てくる。まだオープン戦も始まっていないが、目の前で繰り広げられるチャンスをつかむ戦いに、夏を思わせる日差しを浴びつつ、プロ野球の厳しさを改めて思う。

そんなリアルな厳しさを考えて見ていると、3回表2死一、二塁で右前打に右翼度会のプレーが目に飛び込んできた。二塁走者が三塁を回ったところで、冷静に判断して中継に送球。それも、日刊スポーツ評論家の谷繁さんが指摘したように、低い弾道でカットマンに正確に投げていた。

右→一塁→三塁と渡るも、一塁走者の三進は刺せなかったが、谷繁さんの指摘をしっかり修正していた。見ていて、思わず笑顔になってしまった。谷繁さんの指摘を受けてしっかり修正したと私は思いたいし、そういうスタンスで必死に試合に取り組む度会の姿勢に好感が持てた。

私の2024年キャンプ取材最終日に、いいシーンを見ることができた。私の評論が少しでも現場の選手の参考になれば、これに勝ることはないなと、ここまで12日間取材で回った各球団の健闘を祈る気持ちになった。(日刊スポーツ評論家)