突然だが、私は自分の性格を「不言実行」タイプと認識している。よく言えば「慎重」かもしれないが、その実は「失敗した時のことを考えて逃げ道を用意する臆病者」だろう。

 だからこそ、有言実行の姿勢に徹する巨人菅野智之投手(27)に接するたび、敬意の念が沸いてくる。

 巨人のエースは今季、目標の公言を恐れないスタイルを貫いている。28年ぶりの3連続完封直前には「しっかり意識して投げます」、チームの大型連敗ストップに向けては「0点に抑えれば絶対に負けることはない」。その他にも「今年は10回くらい完投をしたい」など、心の内にある言葉を隠さずに伝えてきた。

 なぜなのか。菅野は「自分の中で隠していても、思っていることは事実ですし、周りも気づいていると思うんですよね」と前置きした上で、信念の一端を説明してくれた。

 菅野 世の中には「言ってできなかったら恥ずかしいから言わない」というような風潮がありますよね。でも僕は、思っていることを口にすることでプレッシャーがかかるからと隠す選手であることの方が、もっと恥ずかしいんです。あえて口にするわけではないんですけど、思ったことは言う。それが自分を高めることになると思うんです。

 0点に抑えると誓って挑んだ6日の西武戦は、6回5失点で肩を落とした。しかし翌週、13日のソフトバンク戦では、3安打1失点10奪三振で完投勝利。マウンドで雄たけびを上げた。

 目標を公言したぶんだけ敗戦の屈辱は大きくなったが、それこそが次戦では快投を生む原動力へと変わった。重圧から逃げずに向き合い、正面突破で乗り越えていくから、菅野のピッチングは心を揺さぶる。1人の人間であり社会人として、その姿勢に強く影響を受けている。【巨人担当=松本岳志】