7月19日のソフトバンク戦(北九州)で西武中村剛也内野手(33)が通算350本塁打を達成した。5回にモイネロからバックスクリーン右へたたき込んだが、チームは敗戦。試合後は笑顔を見せることなく「また打てるように頑張ります」とだけ話した。

 記録には関心を示さない。節目のアーチを誰から打ったかは「ウルフ(200号)と大谷(300号)ですよね」と覚えているが、手応えの記憶はほとんどなし。「感触がよかったとか、手応えがあったとか、そういうのは正直、覚えてないんですよ」。どんなに飛んでも、風に乗っても、フェンスを越えれば1本の本塁打。飛距離や高さで得点が増えるわけでもない。チームが勝つために打つという信念は、こんなコメントにも垣間見える。

 そんな中村にとっても、プロ1号はやはり別もの。「7番DH」で先発した04年7月24日近鉄戦。「(打った投手は)山村さんですよね。試合は打ち負けました(11対17)けど、うれしかったことはよく覚えてます」と、第1歩は負けても感情の記憶として胸に残る。

 今季の打率は、5月下旬から2割台前半と苦しんでいる。350本目を打った次の試合の21日日本ハム戦前には「今年はホームランだけが出ている感じですね…」とぽつりと言った。それでも、25日からのオリックス戦で今季初めて決めた3戦連発は、同点弾→同点弾→1点リードの8回の貴重なソロといずれも、これぞ主砲というひと振り。チームを2カード連続の3連勝に導いた。

 ここまで、規定打席に到達したシーズンは全てホームランキング。頼れる4番に、今年もやってくれそうな気配が漂い始めた。【西武担当 佐竹実】