「最後に負けたら、全部ダメやけえ」と広島緒方監督は静かに言った。秋季キャンプ中の宮崎・日南海岸。海に反射していた夕日も消え、肌寒くなる時間帯。日課にしていた天福球場から宿舎まで約7キロのウオーキング中。「はい、こんにちは」と地元の中学生へあいさつを返しながら、指揮官は奥歯をかみしめた。

 色あせるはずのない連覇。だがクライマックス・シリーズ(CS)で敗れた悔しさが色濃く残る。「全部俺の責任。先に手を打たれて、受けに回ってしまった」。赤いサングラス越しで表情は分からないが、同じように静かだった。「ワンプレーで流れが変わる。分かっている。でも、だからこそもう一手を」。自問自答するように続いた。

 メディアに露出し、自分の考えを語るタイプではない。コミュニケーションも決して得意とは言えないし、器用でもない。ただ勝利への執念、「いい方向に導いてやりたい」、「勝たせてやりたい」という思いは尋常ではない。「今年は去年より厳しかった。来年はもっと厳しくなる。でもな、やることは一緒やけえ」。私事だが異動で年明けから広島を離れることになった。外からになるが、執念の4年目にも注目したい。【広島担当=池本泰尚】