平田勝男2軍監督(2018年11月1日撮影)
平田勝男2軍監督(2018年11月1日撮影)

もう少しで「不惑」を迎える。孔子はそうだったのかもしれないが、とてもじゃないが、そんな心境にはならない。まだまだ不明を恥じる日々である。野球記者として16年目。取材対象への興味を抱くテーマは当然、時とともに変化する。

頂点を目指して必死に白球を追っていた同年代の選手も、いまや監督やコーチになった。当時はトップアスリートたる若者の気概に迫ろうと考えたものだが、いまは違う。人を導く。決断する。おのずと指導者の思いにも着目するようになった。先日は阪神の契約更改を取材していて、心にとまったやりとりがあった。

今季、プロ8年目を終えた森越祐人内野手が、こんな言葉を明かす。10月、宮崎での教育リーグ中の一幕だ。「平田さんがフェニックスに来られたとき『欠点は欠点だけど伸びしろだ』と言ってくれた」。内野守備に秀でた森越にとって課題は打撃だ。今季は自己最多の10試合に先発したが、打率1割2分5厘にとどまっていた。劣等感もあったのだろう。打撃さえ上向けば…。平田勝男2軍監督のシンプルなひと言が、胸中に渦巻くわだかまりを取っ払ってくれたのだという。

森越は言う。「そこで、もう1回、リセットして新たな気持ちでというか、そう考えさせてもらえるような、自分になれた」。欠点すら愛して受け入れろ。そんなメッセージか。3度目の2軍監督。来年は60歳になるベテラン指揮官の年輪を感じた。ちょっと違う角度から思考のチャンネルを示してあげる。「気づかせ屋」の真骨頂だろう。【阪神担当=酒井俊作】

打撃練習をして汗を流す森越祐人(2018年11月17日撮影)
打撃練習をして汗を流す森越祐人(2018年11月17日撮影)