珍しい光景だった。第3クール初日の9日。ティー打撃を行うドラフト1位小園海斗内野手(18=報徳学園)に、松山がスイングの手本を見せていた。後ろの軸足を内旋させながらリズムよく腰を回すと同時に、バットを肩口から地面に向かってけさ斬りのように軽く振り下ろす。まねする小園は、スムーズに振れずに苦笑い。その場に、迎打撃コーチも加わった。西川や東出打撃コーチも声をかけた。終始、和やかな雰囲気だった。

迎コーチはこの場面について「一連の動作の中で振る練習。まだ、手だけで振りにいっている部分がある」と説明した。下半身の動きにバットを連動させ、ヘッドの重さを感じながら無駄な力を入れずに振る訓練ということなのだろう。ただ、ここで言いたいのは技術的なことではない。

小園の「愛される能力」である。当初は「今年のドラ1はどんなもんか」という目で見ていたであろう先輩たちが、手を差し伸べたくなる雰囲気があるということだ。気を使うことの多い毎日だと思うが、物おじせずに輪の中に入る。アドバイスに真摯(しんし)に耳を傾け「吸収できることが多い」と話す。そういう振る舞いが、自然と人を引きつけるのだろう。

広島のショートには田中広という絶対的存在がおり、すぐにレギュラーになるのは難しい。それでも小園には野球の才能に加え、人間としての魅力がある。ファンからも愛される名選手になる可能性は、十分にあると思っている。【広島担当 村野森】