球速は違っても、直球は外角低めに決まった。昨季限りで現役を引退したソフトバンク摂津の引退セレモニーが2日、阪神戦(ヤフオクドーム)の試合前に行われた。背番号「50」のホームユニホームを身にまとって、セレモニアルピッチで「最後の1球」を投げた。「誰にも負けない制球力」と誓い続けプロ10年を駆け抜けた男は、やはりピシャリとアウトコースに決めてくれた。グラウンドでセレモニーを見守っていた王球団会長は、捕手高谷のミットにボールが収まった瞬間、「いいボールだ!」と言って手をたたいた。

開幕月の3月は始まりの季節でもあり、別れの季節でもある。名古屋では鉄腕サウスポーの中日岩瀬が最後のマウンドに上がった。育成選手登録し、ロッテとの試合で先発登板。打者1人との対決だった。歴代1位の1002試合に登板し、407セーブもプロ野球記録。プロ20年で先発は00年の1度だけ。19年ぶりに味わうまっさらなマウンドで別れの腕を振った。

レジェント左腕に対して対戦相手のロッテは何とも粋な演出をした。先発メンバーを見てみると、1番井上、2番バルガス、3番鈴木…。鉄腕左腕に敬意を表して普段なら「4番」の井上からオーダーを組んでいた。一昨年の引退試合で豪快にアーチを放った井口監督らしく、何とも憎らしいさい配ではあった。開幕のカウントダウンも1カ月を切った。チーム調整も慎重に進めていかなければならない中で、単なるセレモニーにしない心配りだったのではないだろうか。井上も豪快な? 空振り三振で、レジェンド左腕に花を贈った。

さて、ホークスは福岡に戻って初ゲームで勝利。まだまだ勝ちにこだわる必要はないが、やはり勝利は気分が悪いはずがない。ロッテもしっかり勝っていた。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

岩瀬先発の中日とロッテのスタメン(撮影・前岡正明)
岩瀬先発の中日とロッテのスタメン(撮影・前岡正明)