ロッテ鳥越裕介ヘッドコーチ(48)の母校、大分・臼杵高を29日に訪れた。臼杵駅改札を出ると、左側に明るい色の校舎が見える。駅側に校門はない。橋を渡って、川沿いを歩いて遠回り。学校の南側には小高い山があった-。

本当は、29日は家から1歩も出ていない。外出自粛要請に従った。ロッテ担当記者として、在宅ワークで何ができるか。グーグルの「ストリートビュー」で、選手や首脳陣の故郷を“歩いて”みることにした。

取材に限ったことではない。私は、接する相手のルーツを知りたい。どんな景色で育ってきたのか。山、波、煙突、神社…。眺めてきたもので性格が変わるとは思わないが、何となくバックボーンを感じたい。あぁ、鳥越コーチはあそこの体育館で、文化祭の時に野球部仲間と爆風スランプを歌ったのか、と。

次は富山・魚津市へ。石川歩投手(31)の故郷だ。赤い柱が目立つ商店街が続く。一方通行路を直進すると、日本海に出た。蜃気楼(しんきろう)で有名な魚津の港。晴れれば立山連峰も見えるはずだ。ロッテは今季も富山での試合が予定されている。

大きな池がある大阪狭山市を少し歩いてから、一気に青森・八戸に飛んだ。田村龍弘捕手(25)のプロ入り前を疑似体験する。中学を卒業し、1人で見知らぬ街へ-。実際に全く違う景色を見比べると、その決断に感服の思いになる。

便利な時代だ。手のひらの上で海外へも行ける。日本から約1万2000キロ先、カリブ海のキューバへ一瞬で向かった。レオネス・マーティン外野手(32)が育ったというコラリージョの街は「歩ける」ほどのデータはなかった。写真が1枚。パステルカラーの家が印象的で、どんな故郷なのか聞いてみたい。

1人1人の情景を知れば知るほど、奇跡に感じる。大人になった彼らが集い、100メートル少々に収まる狭いグラウンドで一丸となって、小さなボールと大きな夢を追う-。寝転がりながらの“ストビュー旅”で、シーズン開幕への思いがさらに募った。