「5番ファースト グリーンウェル」。どうやらその日がデビュー戦らしい外国人選手が打ちまくって、いきなりお立ち台に立った。買ってもらったばかりの応援メガホンをたたきながら「かっとばせー、新庄!」と、歌詞のわからない応援歌を見よう見まねで叫んだ。私が生まれて初めて球場で観戦したプロ野球の記憶だ。

兵庫県出身で子どもの頃は阪神ファンだった。ルールも選手もよく知らないが、ローカル局で毎日のようにテレビ中継を家族で見ていた。冒頭の試合は、父に連れられて初めて行った甲子園のライトスタンドで見た。あらためて日付を調べてみると97年らしい。まだ8歳の頃だったのか。5月3日、ゴールデンウイークのことだった。

2020年。プロ野球のないゴールデンウイークが過ぎ去った。本来なら世間が大型連休を迎えるこの期間、プロ野球は連戦を組んでほぼ毎日試合があるものだ。ある日、オンラインで取材対応してくれた内川は「ぼくは父が高校野球の監督だったし、人生でゴールデンウイークを1回も経験したことがない。野球ができないことは残念だけど、子どもと接する時間をいただいた。マイナスの中でプラスだと思う」と話していた。例年なら連戦だったり、遠征が入る年もあったり、家族と過ごす時間は満足に取れなかった。

スポーツ新聞社の社員である私も、入社してからはどの部署にいても普段より忙しく、この時期にあまりまとまって休んだ記憶がない。それ以上に野球選手たちは、野球漬けだったであろう幼少期を含めても過去にないくらい珍しいゴールデンウイークになったのではないだろうか。いつか無事に開幕したときに「こんなこともあったな」と振り返りたい。【ソフトバンク担当=山本大地】