快晴の空には乾いた球音がむなしく響いた。プロ野球の「元日」といえる2・1キャンプイン。誇り高き紺色の日本一フラッグがなびくソフトバンクの宮崎アイビースタジアムもスタンドにファンの姿はなかった。
「今年は去年以上に大変なキャンプだよ。去年はまだキャンプは普通にできていたからね」。そう言ってマスクの顔をしかめたのはホークス王球団会長だった。60年以上のプロ野球人生でも初体験のコロナ禍。忍び寄るウイルスの恐怖と闘ってもう1年になる。終息を願いながらも、苦難にひるんでもいられない。今季はシリーズ5連覇がかかる。背中に受けるファンの声援はないが、選手たちには「克己」の精神を求めた。「人(ファン)の目がない、というのは緊張感の中でやれないからね。だから、選手が自ら奮い立ってやるしかないんだよ」。前日1月31日は午前の便で宮崎入り。故恭子前夫人方の故郷でもある日南市にハイヤーを飛ばし墓参を済ませた。宿舎での全体ミーティングでは最後にマイクの前に立ってチームを鼓舞した。苦境の中で、いかに戦い抜くか-。工藤監督の熱のこもったスピーチにも触発され、かつての「闘将」の姿ものぞかせた。
「勝負事は勝たなきゃいけないんだ。負けると世間の評価が変わる。(評価を)変えさせるものか、と思ってやってもらいたい。もう(シリーズ)4連覇は過去のもの。今年、どう戦うかが我々に課せられたテーマなんだ。心を1つにして頑張ろう」。強い口調で壇上からナインに呼びかけた。95年の監督就任から「ホークスの王」としてもう四半世紀が過ぎた。誰よりチーム強化に情熱を傾けてきた。苦難こそ乗り越える、が信条なのである。この日も打撃練習が始まるとバットを持ってグラウンドに立った。「僕はね、つえをついてでも野球がやりたいんだ」。もう20年以上も前になるが、王さんはそう言っていた。勝負の世界に身を置く選手たちがうらやましい。だから言葉はさらに熱を帯びた。
「うらやましがっている私をガッカリさせないでほしい。2021年、いい年にしよう!」
この言葉に奮い立たないヤツはいないだろう。【ソフトバンク担当 佐竹英治】




