骨か肉か-。阪神ファンならピンと来るフレーズではないだろうか。キャンプ直後に行われた2016年3月3日、ヤフオクドーム(現ペイペイドーム)のソフトバンク戦。若虎たちが熾烈(しれつ)なレギュラー争いを演じるなか、当時の金本監督から飛び出した言葉だ。

外野のレギュラー取りを狙う4年目緒方が1番DHで出場。初回に千賀の150キロを二塁打すると、3回もスライダーを遊撃に内野安打。いずれも初球打ちの超積極打法で結果を出した。そして、6回の3打席目。ソフトバンク加治屋から右膝に死球を受けてその場でもん絶した。

駆け寄った金本監督に緒方は「いけます!」と即答。その後、「こんなところで交代はしていられない」とエンドランのサインに痛みをこらえて二塁へ激走し、一気に三塁を陥れた。試合後の金本監督は「聞いたよ、骨か肉かって。関節とか骨だったら行かせられないけど、肉だったからね。本人も行くというから、肉、行く、でね」。在阪スポーツ紙で大きく扱われた。

あれから5年が経過した。阪神の球団広報として活躍する緒方広報は、あのときマウンドに立っていた加治屋と同じチームになった。「あれで1面にしていただいたので『ありがとうございます』ですね。まさか同じチームになるとは思わなかったですけど、あんないいヤツとも思わなかった」。骨か肉か-。開幕前の激しいポジション争いを物語る出来事だった。【阪神担当=桝井聡】

右膝に死球を受けて痛みをこらえる緒方(2016年3月3日撮影)
右膝に死球を受けて痛みをこらえる緒方(2016年3月3日撮影)