拍手喝采の戻った昨年のスタジアム。オリックス中嶋聡監督(52)はファンに感謝の気持ちを述べた。「音は本当に励みになる。たくさん入ってくれるのは本当に有り難い」。コロナ禍の観戦スタイルで声援こそ送れないが、最終的に原則定員の50%まで上限が引き上げられ、ナインの背中を押す手拍子などが復活した。

その中で25年ぶり、悲願のリーグVを成し遂げた。日本シリーズではヤクルトに惜しくも敗れたが、全試合が2点差以内という僅差。熱戦で日本中の視線を集めた。「やっぱり注目されたら、うれしいですよね。そういうチームでありたいですね」。新しいシーズンに向けてモチベーションはさらにグンと上がった。

「確かに優勝したんですけど、その前が…長かったですよね? まだ志半ばみたいな感じです」

とはいえ、指揮官にとってVはあくまで通過点。21年をきっかけに、常勝軍団を目指す。就任1年目での悲願に向けて昨年は策を練った。「何かを変えないといけないと思っていた。今まで通りではダメだと。選手を替えればどうなのかな? と考えたことがありました」。そしてシーズン中盤からは1番から4番まで、ほぼ固定。福田、宗、吉田正、ラオウ杉本らが打線をけん引し、ベテランT-岡田、安達らが脇を固めた。

「優勝したメンバーが(21年の)ベストだとしても、来年はまた違う。ずっと良い状態のメンバーを探していかないといけない。ベストは常に探すものですから。誰も競争相手がいなかったら、ずっと固定されている選手がレギュラー扱いになると思うんです。常に競争してくれたらチーム力はおのずと上がっていく」

慢心なく、そう語っていた。

主に4番を務めた杉本は32本塁打でタイトルに輝いた。指揮官は「同じくらい打ってくれたらいいですよね」と笑って奮起を促す。さらに「ラオウは誰と組むのが良いのか? と考えますよね。正尚(吉田)とくっつけた方がいいのか、離す方がいいのか。どれがベストかを考えていかないと」と続けた。「新しい選手も入ってきて、ベニ(紅林)が3番に入ってきたり? 認めないけど(笑い)。打順は固定でなくてね、生き物なので」。21年に143試合で130通りのオーダーを組んだ。その手腕を今年も光らせそうだ。

21年は、強敵ソフトバンクに13勝11敗1分けで8年ぶりにカードを勝ち越した。中嶋監督は「ずっとチャンピオンでね。どうやったら、そこに勝てるのかを考えていた。勝ち越したのはすごく自信になった。苦手意識を持たないという理由で、良かったと思う」と一皮むけたナインたちをたたえる。笑顔の絶えない指揮官だが、1度の優勝で満足しない。「勝ったことで勝ちたい欲がもっと出るのか。満足してる選手は1人もいないと思う。もう1回…。優勝したからいいやと思っている選手がいれば、その選手は試合に出る必要はない」。穏やかな表情でも胸中はギラついている。【オリックス担当=真柴健】

オリックス中嶋聡監督(2021年11月25日撮影)
オリックス中嶋聡監督(2021年11月25日撮影)