試合終了後、タッチを交わすソフトバンク甲斐(左)と嘉弥真(撮影・佐藤翔太)
試合終了後、タッチを交わすソフトバンク甲斐(左)と嘉弥真(撮影・佐藤翔太)

<日本ハム3-9ソフトバンク>◇23日◇札幌ドーム

物憂げだった顔に少しばかり笑みが戻っただろうか。二塁ベースに座り込んでソフトバンク甲斐はゆっくりと打撃用のレガーズを外した。4点リードの8回1死二、三塁。甲斐はフルカウントから玉井の142キロのツーシームを打った。打球は前進守備の二塁石井のグラブをはじき中堅前へ。ダメ押しの2点適時二塁打となった。

「何とか追加点をという気持ちだけでした。チームが勝てるように頑張っていくだけです」。甲斐は短いコメントを広報に託した。甲斐にとっては6試合ぶりの安打&打点。打率はこの打席前まで9分1厘まで落ちていた。

打撃もさることながら「本業」のリード面でも悔しさを胸に秘めていた。前日22日は今季チーム初の3連敗。「大敗」と表現した藤本監督は先発レイとともに3回の守備から甲斐もベンチに下げた。配球面での工夫が足りないとの厳しい采配でもあった。

試合前、甲斐(左手前)と話す藤本監督(撮影・黒川智章)
試合前、甲斐(左手前)と話す藤本監督(撮影・黒川智章)

捕手は酷なポジションではある。ホークスのレジェンド野村克也氏の言葉ではないが、好投すれば投手が褒められ、打たれれば捕手の責任…。気の休まる日はない。4年ほど前のことだった。試合後のヤフオクドーム(当時)。誰もいないグラウンドで甲斐が1人大泣きしている姿を見た。敗戦試合だった。首脳陣から叱責(しっせき)されたのだろう。むせび泣きながら頬を伝う涙を何度も拭う姿が印象に残っている。その年、ホークスは日本一になった。

課題の打撃を追いながら、マスク越しの仕事は絶対的な安定感を求められる。珍しく甲斐は昨オフに打撃面での目標数字を掲げた。「本当は言いたくないんですけど、2割7分は打ちたい。そうすれば、優勝できると思う」。大先輩でもあり、会長付特別アドバイザーでもある城島氏の個人指導を受け、フォームも試行錯誤した。投手陣をけん引し、自らのバットも湿らすわけにはいかない。まだまだ下を向くわけにはいかない。【ソフトバンク担当 佐竹英治】