夏場の阪神に、2つの「継続中」を持つ左腕が帰ってきた。島本浩也投手(29)は6月21日、支配下選手に再昇格。飛躍を遂げた19年シーズンから続く快記録を、さらに伸ばしてほしい。

まずは「プロ初登板からの連続105試合黒星なし」だ。球団最長は桟原(さじきはら)将司投手の持つ116試合。1軍に昇格すれば、今季中に達成可能な数字である。

島本は10年の育成ドラフト2位での入団だった。14年オフに支配下登録を勝ち取り、15年4月2日ヤクルト戦で初マウンドを踏んだ。2回を無失点と無難なデビュー。ここから通算5勝1セーブ14ホールドを稼いできたが、依然として敗戦投手にだけはなっていない。

大きな成長を見せたのは、9年目の19年のことだ。63試合の登板はチーム最多。育成ドラフト入団の投手がシーズン最多登板を果たしたのは、阪神史上初。球界全体でも、09、12年の山口鉄也(巨人)14年の西野勇士(ロッテ)18年の砂田毅樹(DeNA)に次いで4人目、5度目という快挙だった。

島本は同年、防御率1.67の好成績でもあった。阪神で年間60試合以上に登板し、防御率2点未満は生え抜き左腕初である。しかも8月1日中日戦からの21試合で、失点0という圧巻の投球を続けての閉幕だった。同一シーズンではないにせよ、この記録も継続中である。

阪神のブルペンに確かな立場を固めたかに思ったが、苦難が続く。20年はコンディション不良で1軍登板なしに終わり、同年11月に左肘のトミー・ジョン手術を受けた。21年から育成契約となり、リハビリに励んできた。

就任1年目の19年にチャンスをくれた矢野監督は、今季限りで退任する。支配下復帰の会見で島本は「最後の恩返し。しっかり戦力になって優勝したい」と力強く語った。育成ドラフト入団から大ブレーク、そして手術からの復帰。試練を何度も乗り越えてきた、不屈の左腕である。反攻を期す阪神にとって、これ以上の頼もしい男はいない。

【記録室 高野勲】(スカイA「虎ヲタ」出演中。今年3月のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」で準優勝)