西武の5位指名で名前が呼ばれたのは、近江(滋賀)・山田陽翔投手(18)が会見場に着席してからほぼ2時間後だった。
「第●回選択希望選手」のアナウンスがあるたび、10台近いテレビカメラ、その倍ほどのスチールカメラが山田の表情を追った。高松商(香川)・浅野翔吾外野手(17)は巨人1位、大阪桐蔭・松尾汐恩(しおん)捕手(18)はDeNA1位。高校日本代表のチームメートの名前が呼ばれる。甲子園出場経験のない、全国的には名前を知られていない高校生たちも次々に登場する。その間、山田は会場のモニターカメラを見つめ、ひたすら指名を待った。
午後6時40分。西武の5位指名が決まり、ようやく会見が始まった。「ほっとしました。待っている時間は、本当に長く感じました」の声に実感がこもった。
最速149キロのストレートと、空振りを取れるツーシーム、スライダー。エースで4番で主将としてチームを背負い、昨夏から3季連続で甲子園4強以上の戦績を残した。個人としても横浜(神奈川)・松坂大輔(元西武)に並ぶ11勝。申し分のない成績だ。
ただプロの目は、その姿を完成形ととらえた。球団が高校生に望むのは、伸びしろ。ほぼできあがっている、という評価も、山田が高い順位での指名を得られなかった理由の1つだろう。だが、山田には山田ならではの付加価値がある。
西武は「甲子園の星」たちが活躍している球団。正捕手の森は大阪桐蔭、エースの高橋光は前橋育英(群馬)、今井は作新学院(栃木)で全国制覇を成し遂げた。渡辺GMは「非常にスター性もある。甲子園でも数多くの修羅場を経験し、大舞台の経験は強みになる。見ている限りは、チームのためにすごく頑張る選手。自己犠牲をいとわないプレーヤーなのかな。楽しみ」と、山田の価値を認めて指名を決めた。
近江の多賀章仁監督は、中学時代の山田が後輩のために真夏の炎天下で延々と打撃投手として投げ続けた姿に一目惚れ。高校2年半の成長も見守り「これであいつの気持ちに火がつく。はいあがっていく姿が、山田には似合うと思う」と期待する。そして山田は、指名順位について聞かれたとき「今の自分の評価だと受け止めて、入ってしまえば何位は関係ないと思う」と語気を強めた。浮かべていた笑みが、消えていた。反骨心をあらわにしたその姿こそ、山田陽翔だと思いたい。【堀まどか】




