「2億円ダウンです」

私は一瞬、青ざめた。巨人岡本和真内野手(26)の契約更改。コロナ対策のためオンラインでの会見で、代表質問の担当者だった。時間にして1、2秒間だったと思う。心の中で「下がりすぎだ」と思いながらも徐々に「この深刻な下げ幅の理由をどう丁寧に聞けばいいか」と脳内変換していった。

私にとってめまぐるしい1年だった。3月までは五輪担当で、2月には冬季五輪の取材で北京にいた。主にスピードスケートの担当で、高木美帆の金1個、銀3個を取材した。

2月21日、五輪閉会式の翌朝。部長から電話があり北京市内のホテルで野球部への異動内示を受け、4月からは巨人担当に就いた。一発勝負の五輪から、半年間ほぼ毎日ゲームを行い143試合を戦うプロ野球へ。同じスポーツでも選手たちのパフォーマンスの仕方が全く違う。

東京ドームには1試合平均約3万2000人の観客が入る。結果が出なければ大観衆からため息が漏れ、肉体的にも精神的にもタフな半年間を過ごす。その状況で5年連続30本塁打を記録した岡本和。夏場に打撃不振で不動だった4番を外れても、年俸は微増だと思っていた。

冒頭のシーンに戻る。正直、混乱した。前年の契約更改の記事を見返すと岡本和は記者に対し「いくらだと思いますか?」と逆質問していた。その準備はしていたが、今年は「2億円ダウンです」だった。

瞬時に対応できなかった私は平静を装い「その際、球団からはどのようなお話が」などと定型の質問を続けた。岡本和は戸惑ったのか、今度は質問するように言葉尻のアクセントを上げた。「2億円ダウンですよ?」ボケ殺しだった。瞬時に突っ込めなかった私の完全なミスだった。来季から新キャプテンに就く主砲の会心のボケを、スルーしてしまった。

来年1月からはヤクルト担当になる。巨人担当としては直接会って謝ることは難しそうだ。だからこの場を借りておわびしたい。

貴重なボケをスルーしてしまい本当にすみませんでした。9カ月というプロ野球記者歴の浅さに免じてお許しください。来季、新キャプテンとしてますますのご活躍をお祈りいたします。【巨人担当=三須一紀】