7月28日、日本ハムの新本拠地エスコンフィールドの屋根が開き、初めてナイターゲームが開催された。北海道とはいえ、日中の最高気温は32度。蒸し暑い夜空の下、スタジアムの照明に誘われて、小さな訪問客が次々やって来る。虫嫌いの私にとっては全くありがたくない状況だが、グラウンド内では優しい世界が広がっていた。

日本ハム松本剛外野手(29)の話だ。オリックス戦の7回裏、死球で出塁し、味方の安打で二塁へ進んだところで投手交代。一息つこうとベース上にかがんだところ、小さなクワガタムシを見つけた。思わず、二塁を守るオリックス宜保に「お前、ここに小クワガタいるから、絶対に踏むなよ」と声をかけた。脅されてしまった?宜保は「ピンチだったので試合に集中していて、最初は何と言われたのかよく分からなかった。タイムをかけようかと思ったんですけど…。その後、気になって仕方なかったッス」と苦笑いだ。

結論から言うと、危険な戦場に迷い込んでしまった小さな訪問客は無事だった。8回表に松本剛が保護したからだ。二塁ベース付近で拾い上げ「ちょっと、これ避難させてあげてくれない?」と整備中だったグラウンドキーパーに渡し、レフトの守備位置に駆けて行った。「虫は大嫌いなんだけど、クワガタだったから触れました」と松本剛。小さな“救出劇”に、こちらまで笑顔になる。

森林を切り開いたきたひろしま総合運動公園跡地に作られたエスコンフィールドの周辺は、夜になるとほとんど明かりがない。芝の養生のため、試合後の夜中から朝にかけては屋根を開いていることが多く、虫たちが迷い込む。そのまま力尽きてしまう虫もおり、翌朝、出勤した社員有志が外野の芝生で「虫拾い」をしているほどだ。翌29日はデーゲームで屋根を開放する予定だったが、熱中症の危険があることから急きょ、中止になった。札幌ドーム時代では経験できなかった出来事が、次々と起こる新球場。自然の中で生まれる、ささやかなドラマも、また面白い。【日本ハム担当=中島宙恵】

エスコンフィールド
エスコンフィールド