ロッテ名物アナウンス担当の谷保恵美さんが、10月7日のホーム最終戦でレギュラーシーズン最後の責務を終えた。今季限りで33年間にわたったアナウンス担当生活を引退する。

川崎球場、ZOZOマリンで試合を彩った美声だった。引退を惜しむファンの声を聞いた。それぞれに谷保さんへの思いや歴史が込められていた。一部を紹介します。

「サブロ~~~~~」「ふく~ら~~」など特徴のある独特な言い回し。当然ながら、選手にまつわる思いは多かった。

「やっぱりサブローさんの引退、最後の打席」

「初芝清さんの引退セレモニーで声を揺らがせたことがどうしても忘れられません」

「『ただいまの打席がベニー選手のロッテでの最終打席になりました』の言葉です」

さらに日常的な言葉には、安心感や癒やし。当然あるべきものがなくなってしまう寂しさは、計り知れない。

「『お待たせいたしました。パシフィック・リーグ公式戦、千葉ロッテマリーンズ対…』で始まる、いつも変わらないアナウンスがずっと大好きです」

「試合終了でございます」

「私がロッテファンになったのが谷保さんがアナウンスを始めた33年前。今は小学生の娘が谷保さんの声にはまり、マリンにしか観戦に行きません。親子でお世話になってる谷保さんの声がマリンで聞けなくなるのは寂しいな」

一方で特別感、希少性に特化した声もあった。

「小学校5年生の時、当時のマリンスタジアムで試合をさせていただく機会があり、その際アナウンスを担当してくださったのが谷保さんでした。今でも打席に立った時に自分の名前をコールしてくださった谷保さんの声が脳裏に残っています」

「試合終了後イベントのホームラン競争で名前を呼んでいただけたこと。無事内野の線を超えて『ホームランでございます』と言っていただけたこと。一生ものの思い出です」

「かつて球場でアルバイトをしていました。スコアボードの操作をする係で、谷保さんの隣に座って操作をしていたのを鮮明に覚えています。裏でしか見えないような姿でさえ、明るくすてきな方でした」

近年ではコロナ禍で無観客試合が続いた時期も。無観客から有観客へ。人数制限もあった。今季からは声出し応援も解禁。ふさぎ込んでいた心を晴らしてくれたのもまた、谷保さんの声だった。

「コロナ禍の時の『中継をご覧の皆さま、応援よろしくお願いいたします』。在宅にはならない職のため、緊張感で疲弊した毎日の中でいつも通りの優しいアナウンスにとても励まされていました」

「『お待たせいたしました。ご来場のファンの皆さま、ZOZOマリンスタジアムにお帰りなさい! 皆さまのお越しをお待ちしておりました。今日は球場での野球観戦どうぞ楽しくお過ごしください』。コロナの無観客試合明けでこの先どうなるのか分からない不安の時にこのアナウンスを聞き、励まされましたし、涙が出た」

グラウンドでトラブルなどもある。だが、その切り返しもさすがだった。

「『日差しの影響で視界が遮られているため、一時中断します』。11月にZOZOでデーゲームをすることはなかったので、マニュアルにない対応だと思う」

「ビジターユニホームデーで1人間違えてホームユニを着ていた大塚明現コーチに『お呼び出しいたします。大塚選手、ユニホームが違います』で場内が爆笑に包まれたのが一番印象に残っています」

「去年の『鳥の群れがおりまして』ですかね」

谷保さんの声は、ファンの心の中に温かく染み、これからも語り継がれていきそうだ。【ロッテ担当 鎌田直秀】