「強さは速さにならない」。DeNA蝦名達夫外野手(26)の胸に、現役バリバリメジャーリーガーの言葉が残る。

昨年12月、同じ右のパワーヒッターで憧れだったカブス鈴木誠也外野手(29)に弟子入りし、一緒にトレーニングを行った。2人とトレーナーの3人だけの空間。貴重すぎるマンツーマンの打撃指導で教わった思考法がある。

一番に言われたのは力みをなくすこと。「強く振ろうとしすぎてる。バットを速く振るイメージに変えた方がいいと思うよ」。10割のフルスイングではなく8割のスイングの感覚をたたき込まれた。「力を入れたらバットは返らないから、ヘッドは走らない。強く振ろうとしてもバットは速く出てくるわけじゃない。強さは速さにならない」。言葉通り、キャンプから力まないように、バットを走らせることを意識してきた。

とはいえ、すぐに実践できるほど容易な感覚ではない。「練習では意識してスパってバットが出るんですよ。でも試合になるとどうしても欲が勝ってしまう。そこは難しいです」と結果を求めすぎる気持ちを抑えて、スイングへと意識を向ける訓練を積んでいる。

目標設定にも師匠の言葉が反映される。「あんまり上見すぎない方がいいよ。第三者の人になって自分を見てどのぐらい行けるのかという数字を目標にした方がいい」とアドバイスされた。昨季は42試合に出場し、打率1割4分、本塁打、打点ともにゼロに終わった。「まず、スタメン、途中出場問わずに100試合を目標にしていきたい」と目標ラインを定めた。

豪華な自主トレが実現できたのは、石井琢朗チーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチ(53)の存在があった。広島のコーチ時代に鈴木と親交がある石井コーチに3人のグループLINEを作ってもらい、そこから弟子入りを受け入れてもらった。

2月の宜野湾キャンプ中にも鈴木の忙しさも気遣いながら、打撃動画を送ってアドバイスを請うた。「本当にありがたいし、感謝です。結果として恩返ししたい。きっと見てくれてると思うし、喜んでくれると思う。それしかないですね」。アメリカまで活躍が届くように、打って打って打ちまくる。【DeNA担当=小早川宗一郎】