静かなる船出だった。3月5日、侍ジャパンのトップチームメンバー28人が集まった。雨天とあって、大阪市内の室内練習場で始まった全体練習。昨年3月のWBC優勝メンバーのヤクルト村上やソフトバンク近藤、西武源田らのガチメンバーの一方で、初招集が12人という抜てき組との初日は、ウオーミングアップからよそよそしく、少しぎこちない雰囲気で始まった。

大学生4選手を筆頭に、プロ野球で実績の少ない選手も選ばれた。そんな選考で24年初陣に挑んだ井端弘和監督(48)は「初日、2日目、最終日。『今日が最後か』ってなると、学生もプロ側も交流してるなっていうのはうかがえた。よかったと思っているんですけど、1週間あればなおよかった」と、目に見えてチームとして成熟していく姿を見て、限られた時間を惜しんだ。

欧州代表との第2戦、完全継投を続け、回を追うごとにベンチは騒がしくなっていった。いつの間にか、初日のよそよそしさはなくなり、投手は変化球の握りや、野手は打撃について話し込む姿があった。投げ終えた選手がさらに加わり、最後は井端監督も「すごいことになっていた」というほど盛り上がった。宿舎、グラウンド、ベンチ、ロッカーで少しずつ、自然と融合は進んでいたのだ。

思い切った人選だった側面もある一方で、プロ野球界にとどまらずアマチュア野球界へも、これ以上ないメッセージを届ける機会になった。「活躍を見て、少しでも野球やりたいなとか、夜、バットスイング始めるとか、そういうのがいいことだと思う。センバツも始まるんでね、ちょっと『よーし!』っていうのをね、高校、中学、小学生が気付いてくれればいいなと思います」。きっと、次世代を担う野球小僧たちのハートに、火をつけたに違いない。【侍ジャパン担当 栗田成芳】