全国高校野球選手権大会が6日、甲子園で開幕した。101回目を迎えた夏は、どんなドラマが待っているのか。さまざまな角度から、球児たちの熱き戦いを追う。

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今夏の甲子園では、本塁打の量産が見どころの1つになる。夏の甲子園では17年に中村奨成捕手(広陵)が大会新の個人6本塁打を放ち、総本塁打も大会新の68本(48試合)。昨夏は記念大会のため試合数が55に増えたこともあるが、歴代4位の51本。史上初めて2年連続で50発以上を記録した翌年に、1発がいきなり激減するとは思えない。

ビッグフライ連発の兆候は、地方大会で多く見受けられた。国学院久我山・宮崎が、準々決勝の早実戦でサヨナラ満塁本塁打。高岡商・井林泰雅内野手(3年)、星稜・東海林航介外野手(3年)は決勝で満塁弾。八戸学院光星は決勝の4本を含め青森大会6試合で15本。地方大会15本は、平成以降の甲子園代表校で最も多い。95年PL学園が福留の7本など計14本、増田、万波らの16、17年横浜が2年連続で14本を記録していたが、これらを上回った。

パワーアップの要因として食トレ、特定部位を効果的に鍛えるトレーニングの進化、投球マシンの性能アップ、ヘッドスピードやスイング軌道の解析などが挙げられる。神奈川大会決勝で5本塁打を放った東海大相模は、鵜沼魁斗外野手、山村崇嘉内野手、西川僚祐外野手の2年生トリオで高校通算100発を超えている。2年生がこんなに打つのは、本格的なトレーニングが今や中学生にも普及した証明かもしれない。

打球の運び方も最近は目を見張るものがある。17年の中村(広陵)が中京大中京戦、昨年の小野寺(大垣日大)が東海大熊本星翔戦で、ともに右打者ながら右へ2発放った。逆方向へ2本など、歴史的に全く見られなかった弾道だ。

本塁打が増えると同時に、裏返しの記録も目立つ。16年優勝の作新学院は、5試合で犠打がわずか2だった。17年の大会通算防御率4・48は平成ワースト。超攻撃野球を掲げたり、5点打線をつくらないと勝てなくなったのか。投手には厳しい時代になった。大船渡・佐々木朗希投手、横浜・及川雅貴投手、創志学園・西純矢投手(いずれも3年)ら本格派の大物が地方大会で姿を消し、ロースコアに持ち込める投手が出現するかどうかも注目ポイントになる。

73年8月、第55回全国高校野球選手権大会・決勝 広島商対静岡 サヨナラで優勝を決め大喜びの広島商ナイン
73年8月、第55回全国高校野球選手権大会・決勝 広島商対静岡 サヨナラで優勝を決め大喜びの広島商ナイン

今大会には広島商が出場した。古豪の名前で思い出すのは73年、静岡との決勝でサヨナラのスリーバントスクイズを決めた優勝場面。1点をもぎ取っていた時代が懐かしい。74年の金属バット採用後、本塁打を打たずに優勝したのは92年西日本短大付、03年常総学院だけで、久しく途絶えている。【織田健途】