今年の前半はコロナ禍で野球ファンが球場に行くことができず、ネット動画の需要が増した。次々に元プロ野球選手がチャンネルを開設するなど、YouTubeの存在感は過去最高に。里崎智也氏(44=日刊スポーツ評論家)の登録者は38万人を超える。森本稀哲氏(39=日刊スポーツ評論家)も昨年9月に「ひちょりズム」を開設し、1年で登録者が5万人以上に増えた。
森本氏はパ・リーグTVと契約を結び、試合の動画を利用している唯一の元プロ選手だ。「交渉して使わせてもらえるようになった。プレーを深掘りしていきたい。勉強になった、見てて楽しいなと思うチャンネルにしたい。野球界、パ・リーグを盛り上げたい」。構成を考えて約40分の番組を生配信している。
19年の学研の調査では、小学生が将来つきたい職業は、ユーチューバーなどネット配信者がプロ野球選手を上回った。テレビの野球中継が減り、学生のインターネット接触時間が増える一方。森本氏は配信で酒場のマスターに扮(ふん)しながら「楽しく伝えることが大事。ひげをつけて、ちょっとふざけた演出はありますけど」。キャラクターを前面に出しながら、野球の深い部分を解説する。
10月28日のオリックス-日本ハム戦(京セラドーム大阪)の9回1死一、二塁、左前打で二塁走者の日本ハム松本が本塁憤死。一塁走者の清宮は三塁へ進塁できなかった。森本氏はこの場面を何度もスロー再生しながら、カットマンの動きや走者の進塁タイミングを詳細に解説した。従来なら、テレビの野球ニュースや新聞で深掘りされていた場面を、視聴者と双方向のチャットに答えながら分析。新様式、新時代の形を提供している。
記者の20代の娘2人は、テレビをほとんど見ない。新聞もほぼ読まない。一方でスマホを片手に、YouTubeやツイッターなどのSNSには長時間を費やしている。こうした「ライト層への訴求」はいくらハイライト動画を流しても届かない。SNSなどで、バズらせる(流行させる)必要がある。森本氏は「マイナースポーツの人がやっていることを、野球もしなくてはいけない時代」と言う。
先の「野球動画クリエイター選手権」の応募作品には縦画面の動画があった。縦画面は、横画面のテレビやパソコンではなく、スマートフォンとの相性がいい。野球の魅力をどう伝えていくか。視聴デバイスや動画の内容や尺も、時代に対応できる人材が求められる。(この項おわり)【斎藤直樹】





