DeNA三浦大輔新監督(47)と小谷正勝氏(75)の対談を3回で送ります。名伯楽が大洋(現DeNA)入団時から知る教え子に忖度(そんたく)なく、迫っていきます。初回は山崎康晃投手(28)の再生論。(敬称略)
【取材・構成=久保賢吾】
小谷 監督就任、おめでとう。やるからには1年目から優勝だわな。
三浦 はい。もちろん、一番上しか見てません。
小谷 何と言っても、山崎のカムバックだよ。どうやって、復活させるか。
三浦 ヤスは戻ってきてもらわないと。彼がいれば後ろの厚みも増します。
小谷 俺が見た感じ、球種が少なすぎる。困ったらスプリット。もう1つ、球種を増やせばどうか。
三浦 本人もいろいろ考えて、スライダー、カットボールを投げたりはしてました。
小谷 スライダー、カットはやめたほうがいいね。スプリットがあるんだから。やっぱり、遅い球だと思うね。カーブだね。
三浦 カーブですか。彼も今、いろんなことを試しながらやっています。
小谷 遅い球は投げる勇気がいる。でも、あるとバッターはすごい邪魔になる。過去の大投手はみんな直球と縦のカーブ。力でいってたのを脱皮して、考え方を変えていかないと。
三浦 トレーニング、考え方、ピッチングを根本的に変える、というところまで来ていますね。もう1回積み上げていかないと。
小谷 一番プライドを壊さないで、導いてやるには「野球のふるさと」に帰ることだな。何で良くなったのかを考えるんだ。
三浦 彼も必死になってやっています。原点に戻って、はい上がっていくしかないです。本人の原点がどこなのか、ですね。
小谷 野球を始めた時から振り返って、これだと思った瞬間がある。それが原点。俺は小学生のころ、お宮の石灯籠に向かって投げたら、なぜかうまいこと投げられた。
三浦 僕の場合は子どものころ、おやじが商売してて、店の裏の細い路地でのピッチング、キャッチボールですね。道幅が1メートルあるかないかのところ。それがコントロールが良くなった原点かなと思います。
小谷 人間の視野、感覚ってすごい。三浦は路地がはまったんだな。細くて、変なところに投げたら当たっちゃうから、コントロールのコツをつかんだ。
三浦 プロに入っても、プレートの幅からバッター、キャッチャーのイメージまではつきやすかった。
小谷 山崎にもそういう話を聞かせてやった方がいいと思う。フォームに関してはどう感じてる?
三浦 少し体が開き気味になっている部分が少し気になるところです。
小谷 俺は足だと思うね。左足上げる時に、カーンと勢いよく上げるじゃん。もう少しゆったり上げれば、何とかなると思うな。良かった時は、リリースの時に左膝がピーンと伸びてた。今は曲がったままだから、一塁側によろける。今年は三嶋が頑張ったけど、抑えはどうする?
三浦 康晃に新しいシーズンになって「また抑えからやってください」というわけにはいかないです。他の選手も見てますし、もう1回信頼を積み重ねて「もう1回任せよう、打たれたら仕方がない」とならないといけないです。
小谷 三嶋ははまったね。真っすぐは150キロ以上投げられて、コントロールもいいからね。フォークもスライダーもあるだろ。なかなかいないよ。
三浦 メンタル的にも、あそこのポジションは合ってる感じはします。
小谷 山崎と勝負だな。彼をはめないと苦しくなるぞ。負け試合で使うような投手じゃないからね。
三浦 やってもらわないと困りますから。このまま終わってしまう可能性だってあると覚悟を決めて、自分でポジションをつかみ取るしかないです。
小谷 あんなにやってきたんだから、ちょっとのアドバイスでさっと良くなる。三嶋、山崎、この2人がカチッとはまれば、ペナントを狙えると思うんだ。(つづく)
◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算24勝27敗6セーブ、防御率3・07。79年から投手コーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団でコーチ、13年からロッテ。17年から昨季まで再び巨人でコーチを務め、多くの名投手を育てた。