TBS「東大王」などで活躍するクイズプレーヤー伊沢拓司(27)が、クールかつ情熱的に侍ジャパンへエールを送った。各界の一流に聞く「侍を語ろう」。スポーツ観戦が趣味で、保育園時代からの野球ファンでもある「クイズ王」が、頭脳派ならではの考察と熱い思いにあふれたトークで、「金メダルへの方程式」を導き出す。【取材・構成=広重竜太郎、浜本卓也】
にこやかな伊沢の表情に勝負師の厳しさが宿った。「せんえつながら…」と侍ジャパンクイズ対決を挑まれると、テレビでおなじみのクイズ王の顔になった。
【Q】84年ロサンゼルスオリンピック(五輪)決勝。金メダルを獲得した日本の4番は荒井幸雄だが、対戦した米国の4番は
出題を聞くと「…どっちだ?」と、つぶやいた。頭の中に浮かんだ答えは「マーク・マグワイア」と「サミー・ソーサ」。丁寧に絞り込んで「マグワイア!」と決断した。お見事! 「良かった~」と笑ったのもつかの間、やや前のめりに次の問題を待った。
【Q】日本が初戦で戦うドミニカ共和国がある、カリブ海にある島の名前は
「トリニダード島」と返した。が、静寂が続く周囲に、まさかの不正解を悟った。お遊びのエキシビションマッチだろうが、クイズ王は簡単には諦めない。「最初の1文字を教えてください!」と禁断!? のリクエストの直後に「イスパニョーラ島!」。執念で正解にたどり着くと「いや、でも、思ったのと違うので失格です。悔しいな!」と目尻にしわを寄せた。
この短時間でのクイズ対決に、クイズ王の「勝負哲学」が凝縮されていた。
伊沢 短期決戦で必要なのは『見切り』と『集中力』。絶対に勝たないといけない勝負、例えば5点先取だったら、4点取られてもいいんですよ。1問1問、悔しがらない。
少年時代、松井秀喜の「55」のリストバンドを身につけ、父と埼玉・戸田球場などの球場を何度も訪れて身についたクイズ王の哲学は、侍ジャパンの戦い方にも重なるという。
伊沢 3点リードだったら、2点は取られてもいいなって采配になっていく。
対戦5カ国すべてに完勝するのは不可能に近い。クイズも野球も、相手より1点、上回れば勝利を得る。
伊沢 だからこそ、その割り切りは必要になるわけですよね。『見切り』『見極め』の采配の機微が、楽しみになってきます。
クイズ番組で見せる勝負強さの秘訣(ひけつ)も野球に通じる。ブラウン管越しで敗れる伊沢を見る機会は少ない。そのわけは「切り替え」にある。クイズ番組では『クイズ→トーク』が繰り返される。伊沢は「トークの時はトークを楽しむ」ことができるが、他のクイズプレーヤーは違う。
伊沢 1問やって『しばらくクイズはないな』と、トークで必死に話をしていたら『さあ次の問題です』ってなって、バタバタしちゃうんです。僕より強い人がテレビでうまくいかないのは、そのリズムの問題。
クイズはクイズ、トークはトークとスイッチングすることは、試合という“オン”と、極限の緊張から解き放たれたグラウンド外の“オフ”との切り替えに通じる。
伊沢 ペナントを戦う皆さんはお上手でしょうけど、そこはポイントかなと思います。『抜く時は抜かないと勝てない』のはあると思います。(五輪期間中に)リラックスしているところも見てみたいですね。
勝負哲学を明かすと、「ちょっと失礼します」とペットボトルの水で喉を潤した。冷静沈着で、頭脳明晰(めいせき)。だが、クイズに出会った中学時代よりも前、保育園の時に知った野球となると「考えながら見るのは好きですけど、やっぱり熱狂が勝っちゃいますね」と、頭脳と感情が沸騰する。そんなクイズ王から見て、侍にはクイズプレーヤー向きの選手が1人いる。「それでいくと…」と、意外な選手の名前を挙げた。(敬称略=つづく)
◆伊沢拓司(いざわ・たくし)1994年(平6)5月16日、埼玉県生まれ。クイズプレーヤー、「(株)QuizKnock」CEO。東大経済学部卒。開成高在学中の10、11年に「全国高等学校クイズ選手権」(日本テレビ系)で連覇。クイズ番組「東大王」(TBS系)に出演し、一躍有名に。著書に「勉強大全」(KADOKAWA)など。予備校講師でタレントの林修氏の教え子でもある。





